中国に続く第2シードで金メダル候補の水谷隼（32＝木下グループ）伊藤美誠（20＝スターツ）組が、フルゲームにもつれ込む大接戦を大逆転で制した。最終ゲーム、7度もマッチポイントを握られながらも、第7シードで世界選手権銅メダルのパトリック・フランツィスカ、ペトリサ・ソルヤ組（ドイツ）を4－3で破った。

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普段は伊藤の尻に敷かれる水谷が、五輪の舞台で仮面を脱いだ。4大会連続出場の経験を存分に発揮。3－3で迎えた最終ゲーム。持っている全てをフル回転させた。

ドイツにいきなり5連続失点。水谷、伊藤は落ち着きを取り戻せず2－9と最大7点差にまで水をあけられる。9失点中7失点が伊藤のミス。表情からトレードマークの笑顔が消えた。

「土俵際に立たされても諦めない」とここから水谷が見せる。フォア強打のフェイントから緩く返球すると、フランツィスカが思わずミス。3連続得点で反撃を開始した。6－10とマッチポイントを握られ追い込まれても、集中力は途切れなかった。

得意のフォア強打や、最近磨きをかけるバックハンドの高速回転レシーブ「チキータ」を駆使し、4連続得点で10－10に追いつく。7度の相手マッチポイントをしのぎ、最後はこの日初となる伊藤のロングサーブで16－14と死闘を制した。

泣きそうな伊藤に「行こう！　大丈夫」と励まし、戦う表情をつくり、後輩を鼓舞した。同じ静岡・磐田市の出身。水谷の父信雄さんが代表を務める豊田町卓球スポーツ少年団に伊藤が4歳の時に入団し、その頃からの幼なじみだ。普段の試合や会見などでは奔放な伊藤がリードし、水谷が1歩下がる関係性だが、この日は違った。

勝利の瞬間、伊藤は涙した。「水谷選手の諦めない気持ち、声も1本1本かけてくれて、顔つきもそう。水谷選手とだから勝てたのだと思います」。水谷の豊富な経験が伊藤を救った。【三須一紀】