男女シングルス3回戦で日本勢が初登場した。男子は張本智和(18=木下グループ)が香港の林兆恒(24)と対戦し、4-1で五輪初勝利。

初戦の日程が試合前日に連絡もなく変更になるアクシデントに見舞われたが、事なきを得た。女子は3大会連続出場の石川佳純(28=全農)が、タイのオラワン・パラナン(23)に4-2で勝利。16年リオデジャネイロ五輪では敗退していた初戦を緊張感の中、突破した。

   ◇   ◇   ◇

卓球台の前に立つと「重苦しい空気感」を張本は感じた。憧れ続けた夢舞台。緊張と重圧が想像以上にのしかかる。それでもいい。「オリンピックを強く意識していた。あえて、そう思い続けて戦おうと決めている。プレッシャーは当たり前です」。

「実力も本来の半分しか出せていない」のも想定内だった。第3ゲームを落として迎えた第4ゲームでいきなり5連続失点。世界ランキング4位の張本が同95位の林に押される。かつては向かって来る格下を苦手としていたが「半分の力でも勝てるようにしなければならないのが五輪」と焦りはなかった。第4、5ゲームとも12-10と競り合い、五輪初白星を挙げた。

前日、想定外のことが起きていた。当初は27日午前10時からの試合が組まれていたが、前日25日の夜に急きょ、26日午後4時30分に変更された。しかもチームに連絡もなかった。

チーム関係者が偶然、インターネットを見て気がつき午後8時30分ごろ、張本に連絡を入れた。「正直びっくりした。明後日の10時に向けて調整していたので」。

そのおかげで、ラケットのラバーを替えられなかった。トップの卓球選手はベストな状態の用具で試合に臨むため、試合前にラバーを張り替えるのは通例。ただ日程変更を知ったのが夜だったため、対戦相手の動画を見る時間を優先させ、ラバーの張り替えは諦めた。

ラバーが替えられなかったことで「不安は正直、結構あった。まだ何も始まってないのに終わってしまうのではと」。日程が変更になること自体、これまでの国際大会ではなかった。

それでも「(27日に)2試合やるより、1試合ずつの方が逆にラッキーだ」と言い聞かせて初戦に臨んだ。厳しい洗礼にも動じず、勝ち抜けたことは大きな収穫だった。【三須一紀】

○…張本の試合日程が連絡もなしに前倒しで変更されたことを受け、日本のチームキャプテンを務める宮崎強化本部長が26日までに、組織委員会と国際卓球連盟(ITTF)に抗議した。宮崎氏は「何の連絡もなく、しかも前倒しで日にちが変わっているなど、今までの大会で1度もない」と憤った。「誰も気がつかなければ不戦敗の恐れだってある。再発防止を徹底してほしい」と不快感をあらわにした。