男子グレコローマンスタイル60キロ級で、初出場の文田健一郎(25=ミキハウス)が、3試合を勝ち抜いて2日の決勝に進出した。銀メダル以上が確定して、男子は52年ヘルシンキ大会から出場17大会連続でのメダル獲得となった。

女子76キロ級の皆川博恵(33=クリナップ)は、準決勝でドイツ選手に1-3で敗北。2日の3位決定戦は、08年北京大会浜口京子以来、日本勢3大会ぶりのメダルを狙う。

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危なげない試合で、決勝に進んだ。文田は投げを警戒する相手を押し込んで主導権を握る。1-1の第2Pに後ろをとって2点、相手を回して2点。快勝も両拳を静かに握っただけ。「金メダルをとらないと目標をかなえてない」とした。

代表の座を競い合った16年リオデジャネイロ五輪銀メダリストの太田忍に最高の結果を報告したかった。5年前、練習パートナーとして帯同したブラジルの地で、日体大の先輩の雄姿を会場のアップ場のテレビで見ながら思った。「僕がここにいたらどういう風に戦えたのかな…」。悔しさが芽生えた時、本気で五輪を目指す決意が固まった。

国内の選考争いでは最後まで競った。19年6月の全日本選手権決勝で太田を下し、世界選手権代表。その大会で優勝して五輪代表をつかんだ。決勝前、63キロ級で出場していた太田が、「やってやるよ」と、相手のクセや攻略方法などを徹底して伝授してくれた。

この日も会場で太田の激励を受けた。「プレッシャー、かけられました。『(決勝の相手)キューバは怖いな、ちょっと怖いやろ』って」と苦笑い。「忍先輩(太田)は銀メダルなので、自分が金メダルをとって自慢したいと思います」。

文田の銀メダル以上が確定。これで男子は52年ヘルシンキ大会からの連続メダル獲得を「17大会」に伸ばした。「歴史を途絶えさせちゃダメだ、自分が継承していくんだ」と文田。その上で「自分の形を貫いて。手堅くても勝てる試合をしたい」と決勝を見据えた。グレコでは、84年ロサンゼルス五輪52キロ級の宮原厚次以来となる金メダルに挑む。【益田一弘】