今回のチャンピオンズリーグ(CL)は王者であったレアル・マドリードが早々と姿を消した代わりに若手中心のアヤックスが躍進しています。準決勝ファーストレグでも巧みなゲーム運びから勝利を手にするなど、決勝進出が期待されるどころか23年ぶりの優勝も見えてきているといっても過言ではありません。

そのCLですが、今大会から賞金分配が変更になっております。今までは以前も述べましたが、「本戦出場給」、「大会成績給」、「マーケットプール」の3軸となっておりました。今回からここに「UEFA係数給」というものを加算することになります。それでは具体的に見ていきましょう。


<1>本戦出場給(全体の25%=約4億8800万ユーロ)

CL本選出場給になります。32クラブに均等分配され、出場するだけで1525万ユーロ。日本円で1ユーロ130円計算して20億円弱になります。(昨季に比べて255万ユーロ(約3億3000万円)の増額)

<2>大会成績給(全体の30%=5億8500万ユーロ)

グループステージでの勝利給になり、1勝ごとに270万ユーロ、ドローで90万ユーロが配分されます。さらに、ラウンド16進出で950万ユーロ、準々決勝進出で1050万ユーロ、準決勝進出=は1200万ユーロ、決勝進出=1500万ユーロが配分されます。そして優勝ボーナスとして優勝チームには400万ユーロが支払われます。優勝するチームは、決勝ラウンドだけで見ても4150万ユーロ(日本円で約54億円弱)もの収入になります。(昨季に比べて勝利給は120万ユーロ(約1億6000万円)、引き分け給は40万ユーロ(約5200万円)の増額)

<3>マーケットプール(全体の15%=2億9200万ユーロ)

各国のテレビ放送権利のビジネス規模に応じてUEFAが各サッカー協会に分配するというものです。

<4>UEFA係数給(全体の30%=5億8500万ユーロ)

これが新たに加わった賞金配分項目で、簡単に言うとUEFA主催の主要大会で過去10年間にわたって安定した成績を残してきているクラブが一番多く配分されるというものになります。


優勝すると、出場給と合わせて概算で7500万ユーロ(約97億円)前後になります。アヤックスはこの時点で本選出場給1525万ユーロ、グループステージ勝利給1080万ユーロ(グループリーグで3勝3分け)、ラウンド16進出の950万ユーロが確定。決勝ラウンドだけで見ても4150万ユーロ。ここにチケット代やグッズの売り上げなどが加わってくると・・・そしてこのまま優勝となると・・・賞金だけでみても軽く100億円は超えてくる計算になります。


一方で前回お話しした90年代に栄光を誇っていたACミランは現在リーグ戦7位となっており、CL出場圏のかかる4位と勝ち点3差。残りリーグ戦4試合の中での勝ち点3差に4チームありますが、リーグ戦4位以内+その後のCLの本選に出場できるかできないかで20億円近くの売り上げが見込めるわけですから、自らこれらの賞金を手にすることができるとすれば、これほど大きなことはありません。クラブの補強含めて大きくプランに影響を及ぼします。

2018年の収支は税引き前で約1憶2600万ユーロ(約160億円)と発表されていますから、単純計算でも10%以上の割合になります。FIFAファイナンシャルフェアプレー(FFP)による制裁の可能性のお話もありますが、まずはこの4位以内に是が非でも入りたいというのが本音でしょう。

巨額な賞金を生み出すCLですが、一方でここに入ることができなければ厳しさは増すばかり。格差が広がるだけでもあるこの現形態に疑問符がついてもおかしくはありません。【酒井浩之】

(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)