前回お話ししたイングランド・プレミアリーグ、チェルシーの18歳未満の選手の国際的な移籍と登録に関する違反について、11月20日に審議が行われました。FIFAから公式的に22日付で発表がありました。FIFAが定めている18歳未満の選手の国際的な移籍の部分を整理すると、FIFAの規約19条は、3つの例外事項を除いて「18歳未満の国際移籍を原則禁止」としています。3つの例外事項とは次の通りで

1、家族とともに、「サッカー以外の理由で」移籍先クラブの所在する土地へ移住した場合

2、EU(欧州連合)加盟国間あるいはEEU(欧州経済領域)内での移籍の場合

3、そして移籍先クラブの100キロメートル以内に自宅がある場合

としております。

現地の報道によると、今回のチェルシーの件はアウトで、この1月と2020年の夏のマーケットでの選手の補強が禁じられるというものでした。

一体何がどのように引っかかっているのか、改めて詳細を確認しますと、現地の報道では3年にわたって調査してきた結果であることがまず述べられています。その1つがブルキナファソ出身のベルトラン・トラオレ選手の移籍とされました。95年生まれで2014年にチェルシーと契約。その後はオランダのフィテッセ、アヤックスにレンタル移籍後、現在は2017年からフランスのオリンピックリヨンでプレーしています。

問題は2014年のチェルシーとの契約前のことです。よくよく調べてみると、まずこの選手は2009年に行われたナイジェリアでのU−17W杯で14歳ながら大活躍。その後フランスのオーセールのアカデミーで育ったトラオレ選手ですが、2010年の8月にマンチェスター・ユナイテッドとの争奪戦レースに勝ち、チェルシーが契約を勝ち取ったとありました。

しかし2011年の1月段階でまだクラブとは契約がなされておらず、テスト生と称して参加していたというものでした。一見、規約違反ではないように見えますが、争点は当時16歳の同選手が2011年10月23日、チェルシーU-18の一員としてアーセナルU-18との親善試合に出場したという記録のようです。アーセナル公式HP上の試合リポートで、トラオレのプレーが記述されていたともあり、また、当時17歳で迎えた2013年夏のプレシーズンツアーでトップチームデビューも果たしているとありました。

チェルシー側は2014年1月1日以前のトラオレのプレーについては「“オプション契約”の対象となっており、親善試合に出場することに問題はない」と主張しておりますが、実際のところ、どうなのか?という部分であります。プレシーズンも含めて公式戦ではないところでの出場ということですが、実質はクラブが獲得前提の動きです。これを所属しているとされるかどうかですが、18歳以下(未成年)の選手の今後の国際的な動きはより厳しく取り締まられることになりかねません。

その他にも29の選手に関して該当していることが見つかっているとリポートされており、クラブの言い分と本来の目的というところの乖離(かいり)が鍵となりそうです。

これに対してクラブはFIFA控訴委員会の前で争うとしているようで、当然ですが、クラブとしては受け入れるわけにはいかないと思います。

実際のところはどうでしょうか。より良い選手を少しでも若くして獲得したいという魂胆があるのは否定できませんし、実際のところは使い物にならないと判断した場合はリリースされてしまいますから、立場の弱い選手は守られていない感があるかと思います。

このFIFAの取り決めが世界的なユース、ジュニアユース世代の動きにどのような影響を及ぼすのか、注目される部分でもあります。第2の久保選手をどのように作り上げるのか、たった1度の人生を賭ける気持ちはわかります。しかし全く守られない立場になってしまい、クラブにとって都合の良い存在になってしまうことが、本当に正しい選択なのかということも考えていかなければならないのではないでしょうか。

【酒井浩之】

(ニッカンスポーーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)