日本フットボールリーグ(JFL)が佳境を迎えている。J3昇格を目指すヴェルスパ大分は9月21日、アウェーでYSCC横浜と対戦。そこに元日本代表FW金崎夢生(36)の姿があった。
■J3昇格へヴェルスパ大分現在5位
J1から数えて4部のアマチュアリーグということを差し引いても、その存在感は圧倒的なものだった。衰えが見えない高い技術と強さ。そして何よりも気迫。勝ちたい、という思いはスタンドから見てもビンビンと伝わってくる。
文字通り“怖い選手”だった。
味方選手とのプレーが合わなければ、激しく叱責する。妥協がない。観衆1200人ほどのスタジアムでは、ピッチの声が届いてくる。その熱を感じずにはいられない。
後半には相手ファウルで味方選手が倒された。そのプレーについて、主審にも食ってかかった。声高に判定への異議を唱える。遠慮がない。結果的に無用なイエローカードも食らった。
だが、その勝利への気迫が実を結ぶ。1-1で迎えた後半アディショナル。V大分はゴール前へ送ったクロスボール。金崎が打点の高いヘディングシュートを放った。GKは懸命にセーブしたが、こぼれ球となった。そこをMF山﨑一帆が押し込み、劇的な決勝点となった。
J3昇格にはここを勝ち点1か、勝ち点3かで大きく状況が異なるところだった。前線で相手への圧力をかけ続けた金崎の存在こそが、最後の最後で効いた。
あらためて「元日本代表選手」という肩書の大きさを感じずにはいられなかった。
昇格する上での最低条件として2位以内が求められる中、V大分は勝ち点37で5位。首位のホンダFC、2位のレイラック滋賀FCが勝ち点43で走る中、残り8試合を勝ち点6差で追う。
■中村監督「彼がいると崩れない」
試合後、中村元監督に“怖い選手”金崎について尋ねた。
ピッチで物言う選手の存在は、チームにどういう影響を与えているのか。
「本当に今までのイメージがあると思うんですけど。今まで経験してきたことっていうところの“怖いこと(リスク)”であったり、やっぱり伝える力とか、気迫とか、そういうプレーで引っ張るところは本当に若い選手たちは今までそういうのがなくて、びっくりする部分もあると思うんですけど。ただ、彼がいると崩れない。これまでも出場停止やケガで出られなかった時は、甘い部分というのがやっぱり出てしまう。彼がいることでチームが締まるというのはメチャクチャあります。僕がこう大声を張り上げるよりも先に彼が声をかけてくれるから、助かっていますね」
あまり試合中、味方にここまで厳しく物言う選手を見ることは少なくなった。闘将-。この言葉を使うと、かつてジュビロ磐田にいたブラジル代表のドゥンガを思い出す。遠慮がなかった。甘さが見える選手には隣に歩み寄り、試合そっちのけで執拗(しつよう)なまでに自らの考えをぶつけた。勝負への飽くなき思い。時代の変化も影響していることは間違いない。ネガティブな言葉はプロの世界でも避けられ、ポジティブな言葉に変換させて伝える傾向が強い。
普段の練習での姿を問うと、中村監督はプロ意識の高さを口にした。
「もう準備とかは、周りに流されずに自分のことを黙々とやっています。体のことであったり。やっぱりチームを最後にJ3に上げたいという思いがものすごく強い。若手選手に対し、やっぱりその舞台に立たせたいという思いが強い。だから人一倍そういう準備であったり、気持ちの部分であったり、練習の部分であったりと伝えてくれます」
今季リーグで4位タイの8得点(V大分最多)を記録。数字の上でもしっかりと期待に応えている。
■監督との衝突から異例の代表選外
流浪のフットボーラー。三重県出身だが、兵庫の名門・滝川二高への進学から始まる。少年期からフットサルで磨いたテクニックを武器に頭角を現した。卒業後に大分トリニータを皮切りに、名古屋グランパス、ブンデスリーガ1部のニュルンベルク、ポルトガル1部のポルティモネンセ、鹿島アントラーズ、サガン鳥栖、名古屋グランパス、大分トリニータ、FC琉球。9度の移籍で8クラブ目、それがJFLのV大分になる。
国際Aマッチ11試合2得点。日本代表でも活躍した。ただ元来の負けん気の強さからスタッフ、選手と感情的に衝突することもしばしば。それが日本代表活動への足かせともなった。
2016年8月25日のワールドカップ(W杯)アジア最終予選の日本代表メンバー発表の席上、当時のハリルホジッチ監督は、金崎が所属する鹿島で石井正忠監督との試合中の途中交代を巡って衝突したこと理由に、代表メンバーから外したと明かした。当時の日刊スポーツも1面で報じ、大きな話題となった。
■「結果出さないと誰も評価してくれない」
そんな金崎に話を聞いた。ピッチを降りると“怖さ”は消え、まるで別人のように丁寧な対応だった。
「(土壇場での勝ち点3に)最後あそこしなかった。ゲーム展開的にはなかなかいいものではなかったですけれど、今はもう何が何でも勝ち点3が必要なので。そこで自分も少し貢献できたのは良かったですけど、こういうゲームをやっていたら、ちょっと駄目なので。もう1回修正して、しっかりやりたいです」
そして、ピッチで見せた妥協のない強烈な個性についてたずねた。なぜそこまで言い続けられるのか。
「やっぱりそこで1点を取れるか取れないかで、その人の人生が変わるので。みんな同じように努力をして、練習をして、一生懸命やっていますけど。やっぱり最後はピッチの上で結果として出せないと、誰も評価はしてくれません。だからみんなには(妥協せずに)こだわってやってほしいと思います」
普段の練習から厳しい言葉で伝えている。それはJ3に上げるという使命を背負うからこそ。自らの思いをこう吐露した。
「せっかくやるんだったら(J3を)目指すべきです。その分、多くのサポーターも見に来てくれる。やっぱりそういう人たちに今日も見に来て良かったって思ってもらえるように、僕たちが結果を出すのは当然だと思っています、はい」
残り8節。流浪のフットボーラーの結末はどうなるのだろうか。ここからさらにねじを巻いて、勝利というものにこだわっていく。
「もう勝ちが絶対なんで。(上位と)勝ち点も少し離れていますし、もうそれに向けてどれだけこだわってやっていけるかだと思います」
あきらめたら、その瞬間にすべてが終わる。だからこそファイティングポーズは降ろさない。2007年にプロ入りして19年目。長い旅路の中で醸成された不屈のスピリットを武器に、金崎は勝利への欲をむきだしにする。【佐藤隆志】








