スパイク、ユニホーム、レガーズ(すね当て)…。選手が着用するギアは、日進月歩を続けるテクノロジーに比例し、劇的に変化している。90年ワールドカップ(W杯)イタリア大会をきっかけに生まれたアディダスの主力スパイク「プレデター」は、初代モデルの半分まで軽量化され、新モデルがロシア大会で登場する。連載「フットボールの真実」の今シリーズはギアに着目した。

 選手が着用するギアはW杯とともに進化を続けてきた。古くは1954年のスイス大会。決勝は「マジック・マジャール」の愛称で無敵と恐れられたハンガリーと西ドイツの対戦だった。下馬評を覆して頂点に立ったのは西ドイツ。秘密はスパイクにあった。決勝は雨天。西ドイツの担当で、アディダス創業者の靴職人アドルフ・ダスラー氏は秘密兵器を全員に用意した。靴底のポイントをピッチ状況や天候に応じて自在に取り換えられる「スクリュー・インスタッド」という世界初の技術を取り入れた一足。ぬかるんだピッチで滑って転倒する相手を尻目に、長めのポイントを装着した西ドイツは本来のパフォーマンスを発揮し、ギアが大きな注目を浴びた。

 そして、90年イタリア大会を機にアディダスの主力スパイク「プレデター」が開発される。同大会は1試合平均得点が2・21と過去最低記録を更新。FIFAが「ゴールを増やせるスパイクを」と同社に命じて生まれたのが「プレデター」だ。当時のアッパー素材はカンガルー皮革が主流。甲の爪先から階段状、凸凹にゴム素材を搭載し、その反発力で威力あるシュートやスピンをかけたキックを生み出す工夫が施された。

 94年米国大会でクリンスマン(ドイツ)は「略奪者」の意味を持つこのスパイクを着用し、5得点と活躍。98年フランス大会ではジダン(フランス)やベッカム(イングランド)、デルピエロ(イタリア)ら各国の司令塔、日本も名波浩が使用した。ちなみに両大会の1試合平均得点はそれぞれ2・71、2・67だった。

 ただ、革の上にゴムを搭載するため、重さのデメリットがつきまとった。初代モデルは片足で約400グラム。だが、改良を重ね、ロシア大会を前に劇的な軽量化に成功した。「新プレデター」は片足で約220グラム。進化の源はアッパー素材のニットにある。元々はランニングシューズとして開発されたが、軽くて伸縮自在で足になじみやすく、形状維持にも優れることから16年からサッカーのスパイクにも採用した。ボールに回転をつける甲の凸凹部分はゴムからウレタンフィルムへ。ニットの上にウレタンフィルムを熱成型で一体化するテクノロジーも軽量化を後押しした。日本では宇佐美貴史、清武弘嗣らの代表候補が着用している。

 このニット素材は主流になりつつある。ナイキも「フライニット」という新技術を開発し、ロシア大会で全てのスパイクに使用。ペットボトルなどリサイクル素材を原料にしたマイクロファイバーで編まれ、こちらも元々はランニングシューズが原点だった。

 アディダスのマーケティング事業本部の山口智久氏は「アッパー素材かソール(靴底)の素材のどちらかが進化を遂げて今までの歴史をつくっている。最近はアッパーのニットが劇的な変化」と話す。ナイキの担当者も「テクノロジーが天然革を超えた。天然革を使うのは世界的に探すのが大変。数%しかいないと思う」。より軽く、足になじむ「ニットのスパイク」がロシアでのパフォーマンスを向上させそうだ。【岩田千代巳】

C大阪清武が着用するアディダスのスパイク
C大阪清武が着用するアディダスのスパイク