セレッソ大阪が昨年末、監督人事などで一部サポーターから批判を浴びた。
この2年間は5位、4位と常に上位争いしてきたスペイン人、ロティーナ前監督との契約を更新しなかったことが主な理由で、21年はブラジル人のレビークルピ監督の復帰を決断。C大阪では8年ぶり、異例の通算4度目の監督就任となる。C大阪と切っても切り離せない67歳の指揮官とは、どんな人物なのか。
ブラジルの名門サンパウロなど約35年間で、のべ31チームを率いた世界的名将で、一時はブラジル代表の監督候補になった。多数のタイトルを獲得する一方で解任された経験も多いが、常に監督のオファーが途切れない。日本人でいえば、現場を最優先にする65歳の西野朗氏(現タイ代表監督)のイメージに近い。
C大阪森島寛晃社長らが、今回の監督交代の理由に挙げたのは、攻撃的なサッカーの推進と、若手を世界に送り出す育成型クラブの再構築だった。
ロティーナ前監督がこの要素を実行できていなかったわけではないが、クラブはあくまで、より理想に近い人物をレビークルピ監督だと結論付けた。レジェンドの森島社長が就任して丸2年、強化責任者も交代して丸1年。常勝クラブになる思いは、誰が責任者であっても変わらないが、絵を描く人間が変われば、人事に影響を与えるのは組織の宿命でもある。
レビークルピ監督は、攻撃に関して制約を設けないのが最大の特長だ。選手の個性や発想を最優先に、ゴール前では自由を与える。ただしシュートの正確性は厳しく問うし、FWはゴール数でしか評価しない。その信条で10年にJ1で過去最高3位に入った。香川真司や乾貴士、南野拓実らも育て上げ、世界へと送り出した。
ピッチ内外での育成面でも確固たる哲学がある。実戦形式の練習が多く、過去の実績にとらわれず若手を主力組に抜てきする。11年、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で途中交代に不満の態度を示した乾には、その後は謹慎処分とした。主力ブラジル選手であってもベンチから外すなど、チーム内の規律は徹底的に守らせた。
C大阪では今後、20歳DF瀬古歩夢や、バルセロナから注目される18歳MF西川潤をどう成長させるか。ロティーナ前監督は昨年、新人の西川を13試合、193分間しか起用しなかったが、レビークルピ監督は大胆に使うかもしれない。
クラブは前身ヤンマー時代からブラジル路線を歩み、エミリオC大阪初代監督も「チームは家族」という合言葉を用い、何より和を大事にしてきた。森島社長もその中で育ち、同じ系譜になるレビークルピ監督と新たな信頼関係を築く心意気だ。練習も極力、サポーターに公開し、より多くの情報を提供していきたいという。ロティーナ体制とは違った魅力が生まれるかもしれない。
今春には、本拠地ヤンマースタジアム長居の隣に、募金などで改築中のもう1つの本拠地「ヨドコウ桜スタジアム(長居球技場)」が完成する。
レビークルピ監督はちょうど1年前、「私は今、孫の世話をしているが、ぜひ新スタジアムに行きたい。私の思い出が詰まった場所だ」と漏らしたという。単なる運命では片付けられない関係が、C大阪と名将の間にはある。【横田和幸】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)
◆横田和幸(よこた・かずゆき)1968年(昭43)2月24日、大阪府生まれ。91年日刊スポーツ入社。96年アトランタ五輪、98年サッカーW杯フランス大会など取材。広島、C大阪、G大阪などJリーグを中心にスポーツ全般を担当。




