<高校サッカー:青森山田1-1(PK5-4)米子北>◇2日◇2回戦◇等々力

 優勝候補が苦しみながら初戦を突破した。青森山田が米子北(鳥取)にPK戦で競り勝った。後半11分に先制を許しながら何とか追いつき、PK戦では昨年度の大会でも活躍したGK田中雄大(3年)が4本目を止めてみせた。今日3日の3回戦で履正社(大阪)と対戦する。

 名前の通り、雄大に立ちはだかった。田中が救った。米子北の4本目はエースFW小川暖(3年)。「エースと呼ばれる選手は、自分から見て右に蹴ってくることが多い。性格的なところも考えました」。自信をもって右に跳び、力なく転がってきたボールをあっさりとキャッチした。

 運の要素も強いといわれるPK戦。それを引き寄せるだけの準備をしていた。相手がボールをセットするまでゴールの内側に入って待った後、ライン上に両手を大きく広げて立つ。「ゴールの一番後ろに立ってからライン上に立つと、大きく見えるらしいんです。(12月の)天皇杯で広島の西川選手がやっていました」。チームのPK練習に付き合いながら試してお墨付きをもらい、公式戦で初めて実践した。さらに相手が助走に入ると声を張って気合を入れ、両手を合わせて大きく音を鳴らす。「視覚と聴覚に訴えて威圧しました」と胸を張った。

 経験も生きた。昨年度は1回戦で主力GK野坂浩亮(現大体大)が負傷。後半から出場してPK戦で1本止めた。続く2回戦でも2本ストップ。この日、長い間を取って蹴ってくる米子北に対し、2本目までは完全に逆を突かれていた。「動きを見られてるぞ!」。ベンチからのアドバイスに耳を傾け「修正できた」。流通経大柏にPK戦で敗れた昨夏の全国総体は1本も止められなかったが、大舞台の記憶が土壇場で自分を冷静にしてくれた。

 昨年3月に5-0で快勝した相手に大苦戦。終始厳しい表情だった田中も試合後、応援に駆けつけた野坂を見つけると満面の笑みで抱きついた。大会前に「調子が上がらない」と相談すると「力はあるんだから、自分のプレーを出せば大丈夫」と助言をもらっていた。今日3日、3回戦の相手は履正社。「鬼門の3回戦ですから」。09年度準優勝の後、3年連続3回戦敗退。先輩たちのためにも、負の流れに終止符を打つ。【亀山泰宏】

 ◆田中雄大(たなか・ゆうだい)1995年(平7)11月17日、宮城・名取市生まれ。不二が丘小2年でサッカーを始め、5年時からGK。名取一中ではACアズーリに所属。昨年にはU-18日本代表候補にも選出された。家族は両親、弟。184センチ、72キロ。血液型A。