<高校サッカー:履正社1-1(5PK4)青森山田>◇3日◇3回戦◇ニッパ球

 “史上最強”でも呪縛は解けなかった。青森山田が初出場の履正社(大阪)にPK戦の末敗れ、4大会続けて3回戦で姿を消した。前半にクリアミスから失点。後半25分に途中出場のFW橋本峻弥(3年)のゴールで追いつくにとどまり、自信を持っていたPK戦でも2人が失敗した。09年度大会で準優勝した時よりも上という声もあったチームは、最後まで力を発揮しきれなかった。

 青森山田の黒田剛監督(43)は困惑の笑みすら浮かべていた。「これ以上と言ったら、どういうチームを作ったらいいのか、自分の中では分からなくなる。これもサッカーなのかもしれないが…」。それだけ自信があった。昨年度大会初戦で苦戦を強いられた野洲のスタイルをミックス。選手の距離感、攻守の切り替えなどを参考に、MF山田武典、石井光(ともに3年)のダブルボランチを中心とした細かくパスをつなぐサッカーを磨いてきた。主将の山田は「目指してきたことが、最後までできずに終わった。自分のせいです」と責任を背負い込んだ。

 格上と戦うことも多いプレミアリーグでのショートカウンター中心ではない、ボールを持てることを前提とした“選手権用”の戦術になるはずだった。そして、黒田監督が「ほぼパーフェクトな試合」と振り返ったように、主導権を握ってゴールに迫るまでは狙い通り。ただ、フィニッシュの精度を欠いた。警戒していたロングスローをクリアしきれなかった失点時のミスも痛恨だが、2試合で2得点では80分間で勝ちきるのは難しい。準優勝時は得点ランク2位に入ったFW野間涼太(現明大)という点取り屋がいた。指揮官も「総合力で引き分けには持っていったが、個の力というか、1対1に強いFWを育成しないと」と口にする。

 結局、FW李相赫(3年)、橋本とこの2試合でチームを救った2人がPKを失敗。5本目をGK田中雄大(3年)が止めて王手をかけていただけに、悔しさも募る。準優勝を見て集まってきた粒ぞろいの世代。3回戦の壁突破、さらには悲願の頂点も見据えていたが「何かが足りないということなんでしょう」(黒田監督)。青森の雄は、一から出直しを図る。【亀山泰宏】