なでしこジャパンが2連覇を目指す女子アジア杯(ヨルダン)が6日に開幕を迎え、日本は7日に1次リーグ初戦のベトナム戦に臨む。大会での活躍が期待される注目選手を紹介する企画「なでしこの横顔」の第3回は、いじられキャラで周囲に愛される道産子DF三宅史織(22=INAC神戸)です。

 

 2月、日中は半袖にもなれる南国の沖縄で、三宅は少しばかり幼少期を思い返した。INAC神戸での合宿で精力的に汗を流す毎日。先輩で元なでしこジャパンの高瀬愛実(27)との部屋に戻ると、決まってテレビの電源を入れた。そこに映るのは平昌五輪。隣の高瀬はカーリング女子で銅メダルを獲得した「LS北見」がある、北海道・北見市の出身だ。

 三宅も負けてはいない。札幌市生まれで、多くの名勝負を生んだ大倉山ジャンプ競技場は車ですぐ。幼い頃に1度観戦に訪れ「ここから跳ぶのは無理だ」と目を丸めたほどだ。「真栄サッカースポーツ少年団」でサッカーを始めたが、冬になれば雪が積もる。冬休みはスキー場に通い「バッジが家にあります」とテストも受けるほど打ち込んだ。

 「いろいろなスポーツが好きでした。夏は外に出て、サッカー。冬は中でフットサルをやりながら、スキーか、スノボ(スノーボード)。サッカーにつながっているかは分からないですが、冬の競技も大好きなんです」

 日の丸を背負い、五輪で戦う選手を見て、感じることは多くあったようだ。

 今年10月で23歳。大卒の同い年は4月から新社会人となるが、三宅は既にINAC神戸で副将を務める。13年9月22日、長崎。なでしこジャパンの一員として、ナイジェリアとの国際親善試合でデビューしてからは約4年半が経過した。

 当時はJFAアカデミー福島所属の17歳。その試合のGK海堀あゆみからは頭をなでられ、MF澤穂希からは「ピンチも救ってくれたし、期待以上。自信を持ってやってくれた」とたたえられる活躍だった。

 翌14年からINAC神戸に加入(13年は特別指定選手)。今季が5季目だ。代表も佐々木則夫監督から高倉麻子監督となり、自らの立ち位置が変化していることも自覚する。

 「最初は本当に緊張しまくりだったんですけれど、今年23(歳)。若手と思われがちですけれど、『しっかりやらないといけない』っていう意識が出てきています」

 周囲にはいつも仲間が集まり、笑い声が絶えない。そんな「いじられキャラ」は、今年2~3月のアルガルベ杯で大きな危機感を持った。先発した初戦のオランダ戦で6失点。フィジカル面での大きな差を思い知った。

 「海外に行くと1人の力が少しでも低いと、周りが助けようにも助けられない。オランダには正直、なめられて終わったのかなという印象があります」

 それでも、もう弱音だけを吐く訳にいかない。翌日から修正し、第3戦のデンマーク戦で2-0の完封勝利に貢献。高倉監督からは「『行くところは行く』というのはできていたし、ラインコントロールも前よりは良くなった」と一定の評価を得た。それでも油断することは一切無く、見つめるのが女子アジア杯だ。

 「本当にどこのチームもレベルが上がってきていて、予選は難しくなると思います。(オランダ戦からの)改善はできたと思うけれど、それがまた0にならないようにしたいです」

 19年フランスW杯へ、決意と進化を見せる時が近づいている。【松本航】

 

 ◆三宅史織(みやけ・しおり)1995年(平7)10月13日、北海道生まれ。真栄サッカースポーツ少年団、JFAアカデミー福島を経て、13年7月から特別指定選手としてINAC神戸でプレー。12年のU-17(17歳以下)女子W杯では「リトルなでしこ」の8強入りに貢献。165センチ、52キロ。

 

 ◆AFC女子アジア杯 1次リーグは8チームが2組に分かれて争われる。各組2位以内に入って準決勝に進むか、各組3位による5位決定戦に勝つと19年W杯フランス大会の出場権を獲得する。2連覇を狙うB組の日本は7日にベトナム、10日に韓国、13日にオーストラリアと対戦する。試合は全てテレビ朝日系列で生中継予定で、ベトナム戦は午後10時30分(日本時間)から放送。