2年ぶり2度目出場の札幌大谷(北海道)が、GK坂桂輔(3年)の攻守にわたる活躍で、初勝利を挙げた。鹿児島城西戦の0-1で迎えた後半10分、味方が得たPKを自分で決めて同点にすると、1-1で迎えたPK戦の1番手キッカーとして成功。GKとしても2本のシュートを止めるなど“2得点2セーブ”のフル回転で白星を呼び込んだ。

 坂が五郎丸ばりのルーティンで静寂を歓声に変えた。0-1の後半10分、MF西野尾がPKを得ると、自陣ゴール前からさっそうと駆け上がった。ボールを置いて約7秒。目を開けて後ろに7歩、左後ろに2歩。さらに約13秒、目を閉じて集中力を高めた。一気にスタンドが静まりかえった。

 「早く蹴らんかいっ」。そんなヤジもどこ吹く風。目を開けるとボールまで約2メートルの短い助走を、ちょこちょこ19歩、刻んだ。「やられたら嫌なPK」。相手GKが焦れて体重を動かした瞬間に逆をつき、右足でゴール左隅に流し込んだ。

 PK戦でも主役だ。1番目のキッカーとして、確実に成功させ、守っても鹿児島城西3人目のシュートを右足で、6人目は右に横っ跳びして止め、勝利を呼び込んだ。総体含め5度目の全国で初白星。坂は「1点取られても焦らず相手を走らせることができた。思い通りの流れでPK戦までいけた」と振り返った。

 札幌U-12でGK、札幌大谷中でFW。高校に入ってGKに復帰した異色の守護神だ。1メートル77センチと上背はないが、9月にはフットサルU-18日本代表候補合宿メンバーに選出された。足元の技術には自信があり「球足の速いフットサルの練習があったから、PK戦のとき、とっさに足が出せた」と効果を口にした。

 「サッカーはこの大会で終わり」と言う。1月にFリーグ・北海道の練習に参加予定で、進学してフットサルを続けるのが現状の将来像。サッカー選手として最後の晴れ舞台で、大会でも珍しいGKの得点で大会史に名を刻んだ。【永野高輔】

<GKのゴールメモ>

 ◆Jリーグでは 公式戦で過去7人。PKでの得点は1人だけで、浦和の田北が96年11月9日の横浜F戦で記録。14年11月30日のJ1昇格プレーオフでは、山形の山岸が磐田戦の後半ロスタイムにCKからヘディングで決めている。その他の5例は自陣からのロングキックがそのまま風に乗るなどして相手ゴールに偶然入ったパターン。

 ◆GK最多得点記録 元ブラジル代表のロジェリオ・セニの132点。内訳はPKが70点、FKが61点、その他1点。

 ◆GKがハット 元パラグアイ代表のチラベルトはベレス(アルゼンチン)時代の99年11月にすべてPKで3得点。