新潟明訓は東福岡(福岡)に1-3で敗れた。昨夏総体チャンピオンに挑んだが、FW餅山大輝(3年)にハットトリックを許した。立ち上がりは前線からのプレスが利いて相手を慌てさせたが、効果は80分間持続しなかった。左ひざ前十字靱帯(じんたい)を痛めているMF中村亮太朗(3年)が後半、FWとして途中出場。同35分に頭でゴールを決めて一矢報いた。

 痛む左ひざを顧みず、中村が意地の1発を頭で決めた。0-3で迎えた後半35分。逆転が厳しい状況でも貫いた攻撃の姿勢が、最後に得点で結実した。相手DFのクリアボールをMF加藤潤主将(3年)が浮き球にしてゴール前に放り込む。反応したのがFWで途中出場した中村だった。「みんなが戦っているのに、何もできないままで終わるのは嫌だった」。故障を押してプレーして「何か」をやってのけた。

 「朝は痛がっていたので出さない予定だった」と田中健二監督(38)は言う。中村が左ひざ故障に見舞われたのは県大会決勝後。12月11、13日のプレミアリーグ参入戦(広島)は出場を回避したが、選手権1回戦の那覇西(沖縄)戦は先発。後半ロスタイムまでピッチを走っていた。「今はひざを曲げにくい状態。血も少したまっている」。そんな状態でボール目がけてジャンプ。ゴールネットを揺らした。

 試合前、東福岡・森重潤也監督(50)のベンチの指示が新潟明訓側まで聞こえてきた。「無失点でいけ」という選手にかけるハッパだった。そんな相手のもくろみを打ち砕いた中村のゴール。「(新潟明訓も)力があると感じたゲームだった」と話した田中監督は試合後、2試合連続アシストの加藤主将に「お前と会えてよかった」と告げた。

 失点しても、DFラインはセンターライン付近まで上げて攻撃を仕掛けた。後半11分に田中監督は中村を投入。本来はトップ下の選手だが、中村自ら守備の負担が軽いFWを志願してピッチに入った。「(中村を入れたことは)攻撃というメッセージだと感じた」と加藤主将もギアを入れ直した。最後まで勝負を捨てずに、タイムアップの笛を聞いた。田中監督は「負けるには申し分ない相手」と話した。新チームは、インターハイ王者に敗戦した「ここ」から始まる。【涌井幹雄】