全国高校総体との2冠を目指す東福岡が、PK戦で市船橋(千葉)を下し07年度大会以来の8強に駒を進めた。U-18(18歳以下)日本代表候補GK脇野敦至(3年)がPK2本を止め、総体決勝の再現となった市船橋を返り討ちにした。優勝候補対決を制し、前回3回戦敗退で断たれた「夏冬2冠」達成へ、さらに98年度大会以来3度目の優勝を射程圏にとらえた。

 東福岡の守護神、GK脇野が総体決勝のリベンジに燃える市船橋の夢を打ち砕いた。0-0で迎えたPK戦で仁王立ち。2人目のMF工藤を「CKやFKのモーションが印象にあった」とクセを見抜き、右への横っ跳びで阻止した。

 4-3で迎えた東福岡5人目のMF三宅が失敗したが、そばに駆けより「まだ終わってないぞ。俺に任せろ」と気合を込めた。直後のDF杉岡も「総体の(PK)コース、モーションのイメージが頭にあった」とまたも右に跳んでビッグセーブだ。

 脇野は「PK戦が決まりやってやると思った。自信があった」と奮い立った。総体決勝も6-5のPK戦勝利に貢献しており、負ける気がしなかったという。森重監督が「総体でも脇野は2本止めている。彼が1本でも止めればと思っていた」という期待に応えた。

 地獄から天国だ。この日は序盤から闘志あふれる市船橋に主導権を握られた。パスをつながれ、セットプレーからも何度も決定機をつくられた。だがその度に体を張って耐えた。監督時代、本山雅志(J2北九州)らを擁して97年度大会を制し「高校3冠」を成した志波総監督も「市船橋からリベンジされるかと思ったが勝利は1人1人の気持ちがこもった結果。勝因は脇野。ファインセーブが勝利につながった」。名将も興奮を隠せなかった。

 98度大会以来3度目の全国制覇へ前進だ。昨年度は3回戦敗退で「夏冬2冠」を断たれた。それだけに“鬼門”を強豪撃破で突破し、MF中村主将は「市船橋は高体連で一番強いと思う。自分たちのサッカーをやれば大丈夫と思っていた。頂点が目標だが目の前の相手を倒していく」と手応え十分。5日の準々決勝、駒大高(東京B)戦へ弾みをつけた。【菊川光一】

 ◆昨夏の全国高校総体決勝VTR 決勝戦は東福岡が、市船橋とのPK戦を6-5で制し大会2連覇を達成した。東福岡はMF三宅が先制したが、終了間際に市船橋のMF工藤が同点ゴールを決めて延長戦に突入。それでも勝負がつかず、1-1のままPK戦にもつれこんだ。