湘南ベルマーレが1年でのJ1復帰を決めた。2位アビスパ福岡が0-0で東京ヴェルディと引き分け3位に転落。この結果、試合のなかった首位湘南がJ1自動昇格圏の2位以内を確定させた。就任6年目の曹貴裁(チョウ・キジェ)監督が今季取り入れたラグビーのタックルダミーを使った体当たりやビーチでの走り込みなどの改革が実った。今日29日のファジアーノ岡山戦を引き分け以上でJ2優勝も決まる。
昇格決定の瞬間を、曹監督は東京V-福岡戦のスタンドで迎えた。福岡と長崎がともに勝たない限り、湘南は昇格が決まる。1時間早く試合を終えた長崎は勝ったが、曹監督の目の前で福岡が0-0の引き分け。藤和不動産サッカー部として発足以来、50周年をJ1で迎える昇格が決まった。
曹監督は「今年はすごく悩んだし考えた。試行錯誤とか思考という意味合いの強い昇格」と振り返った。開幕1カ月後の第5節千葉戦で、主将のエースFW高山が全治8カ月の重傷。キャプテンマークを託された副主将のMF菊地も故障で夏場に約4カ月離脱した。
そんな中でも「今いる選手が充実感を感じられないと先がない」と、毎日違う練習メニューを考案。ある時は近隣の高校ラグビー部からタックルダミーを借りた。サッカーなら反則になるラグビー式のタックルを実践し、当たりの強さを意識させた。湘南のビーチで走り込んだ日もあった。ルーキーDF杉岡は当初は驚いたが「それぞれ狙いがあり、いろんな刺激を受けられる」と感銘を受けた。
「ミーティングは練習の1つ」と多い時は週3度、さまざまな題材を用いて選手と向き合った。授業形式でホワイトボードに「□事□底」と、四字熟語を完成させる問題を出題。正解は「凡事徹底」で、当たり前のことを徹底的にやることを説いた。他にもパン職人のこだわりを伝える動画、経済成長を遂げている発展途上国の話など…。GK秋元は「共通認識ができた。だから今年は連敗がなかったと思う。あと監督は少し優しくなったかも」と笑って振り返る。
「勝つためにやるべきことが10項目あるとしたら、8つか9つはやりたくないこと。好きなことだけやって勝とうというのは傲慢(ごうまん)」。コーチ時代を含めて4度のJ1陥落を経験した末の「チョウ改革」。今度こそ生き残る。【高田文太】
▼試合なしでJ1昇格 勝ち点80で首位を独走する湘南の1年でのJ1復帰が決まった。前節2位の福岡が東京Vと引き分けて勝ち点69の暫定3位に後退し、残り3試合を全勝しても勝ち点は78。それによって試合のなかった湘南のJ1自動昇格となる2位以内が確定した。J2が創設された99年以降、試合のなかった日にJ1昇格が確定したのは初。湘南のJ1昇格は93、09、12、14年に次いで5度目(93年はJFLから昇格)で、5度は札幌と並ぶ最多記録。
◆湘南ベルマーレ 1968年(昭43)に藤和不動産サッカー部として那須市で創部。栃木県4部から3年で日本リーグ入り。75年にフジタ工業として本拠を東京に移し、70年代後半に日本リーグ3度、天皇杯2度優勝。93年に神奈川・平塚市に移転。「ベルマーレ平塚」と改称し94年Jリーグ参入。94年天皇杯、95年アジアカップウイナーズ杯優勝。00年のJ2初年度から現チーム名に改称。10年にJ1復帰。降格と昇格を繰り返し、J2からの復帰は今回で4度目となった。