FC東京の17歳FW久保建英が横浜F・マリノスに電撃移籍することが15日、分かった。複数の関係者によると、水面下で両クラブが進めていた調整が大筋合意。16日にも期限付き移籍が発表される。スペインの名門バルセロナの下部組織カンテラ出身で、16歳だった昨年11月にプロ契約。将来を嘱望されるが、J1リーグ戦では直近10試合のうち9試合ベンチ外と「プロの壁」に直面。出場機会を求め、港町の名門へ環境を移す決断をした。早ければ16日から練習に参加する。

 Jリーグの今夏移籍市場が閉まる2日前、サプライズの移籍劇が明らかになった。東京の高校生プロ、久保が横浜へ期限付き移籍する。今季は22試合のうち4試合の途中出場だけ。来年6月に迎える18歳の誕生日まで、できるだけ多くの試合経験を積みたいアタッカーは、高校2年生で早くも初の移籍を決断した。

 ユース所属だった昨年4月のJ3C大阪U-23戦でJリーグ最年少ゴールを決め、同11月にクラブ史上最年少の16歳4カ月28日でプロ契約。今年は3月のルヴァン杯新潟戦で大会最年少得点をマークした。

 しかし、J1では開幕から3試合連続で途中出場したものの、いまだ無得点。現在3位と好調のチームには11得点のエースFWディエゴ・オリヴェイラ、ロンドン五輪代表FW永井らがひしめき、徐々に出番を失った。ベンチ外が続き、4月14日のC大阪戦を最後に4カ月間、出場がない。

 一方でJ3の東京U-23では10試合3得点。90分間のプレー機会は確保されているが、主戦場が下位リーグになっている現状に危機感を覚え、J1で戦えるチャンスに懸けたという。クラブも尊重。14位に沈み、攻撃陣にてこ入れしたい横浜との思惑が一致した。

 神戸イニエスタと同じバルセロナの下部組織で育った久保は、12-13年シーズンに30試合74得点の爆発力で得点王に輝いた。だが、クラブの18歳未満の外国籍選手獲得に違反があったとしてプレーできなくなり、中学2年の15年に帰国。東京のU-15むさし、東京ユース経由で、まず日本でプロ選手になった。

 Jリーグの最年少出場、最年少得点記録を更新してきた20年東京五輪、将来のA代表のエース候補。昨年は「飛び飛び級」の15歳でU-20W杯韓国大会に出場し、ベスト16。U-17W杯にもエースとして臨み、優勝したイングランドにPK戦で惜敗した(16強)。今年はW杯ロシア大会で16強入りした西野ジャパンのトレーニングパートナーとして、U-19代表のロシア・カザン合宿に参加した。そこで日本のトップ選手との差を肌で知り、出番のない現状に、より危機感を覚えて帰国していた。

 その後、本人の強い意向を受けた東京側は親心で送り出すべく、横浜と極秘裏に交渉。16日の練習から参加する手はずが整った。来年のバルセロナ復帰を目指す久保は、年齢に関係なく試合に出たい。1度も降格経験がない名門から再出発することに決めた。