秋田商が富山第一に競り勝ち、19大会ぶりに16強進出を決めた。相手は高校サッカーの最高峰プレミアリーグ所属の強豪だが、衰え知らずの走力を武器に真っ向勝負し、勝ちきった。

試合が動いたのは後半29分。相手のオフサイドからハーフウエー付近で間接FKを獲得した。ゴールまで50メートル。本来ならGKに任せるが、FW長谷川悠(3年)が自らキッカーに名乗りを上げた。「高いボールだと相手のDFにはね返される。低い弾道で狙うと何かが起こるかもしれない」。低い球を蹴りこむと、相手GKがファンブル。そのこぼれ球を主将のMF鈴木宝(3年)が左足で押し込み決勝点を奪った。終盤は押し込まれたが、相手へのプレスの足は、最後まで止まることなく、守りきった。

夏の高校総体は県予選で敗退した。その直後から「走り込み特訓」がスタート。地元の山を走り、自然で走力を鍛えた。ボールを使わない日もあり「走るためにサッカー部に入ったんじゃない」と思ったこともあったが、全員で「冬に勝つためにやるしかない」を合言葉に、乗り切った。鈴木宝は「80分で力尽きるような鍛え方はだれもしていない。走力は唯一、胸を張っていい部分」と言う。小林克監督は「苦しい思いをさせた。その苦しさを乗り越えたからこそ、今日の苦しい試合に耐えられた」と格上の相手に競り勝ったイレブンに賛辞を贈った。