青森山田が2-1で矢板中央(栃木)に逆転勝ちし、2大会ぶりに4強入りした。“3代目ロング・スロー・ブラザーズ”ことDF沢田貴史(たかふみ=3年)がロングスローで2得点を演出。高校入学後はケガ続きで、Aチームでの公式戦スタメン出場は今大会が初。青森を出発する3日前に突如監督からスタメン起用を言い渡されたシンデレラボーイが、全国の舞台で鮮烈な輝きを放った。

「足ではあまり活躍していないので、投手です」。ロングスローで会場を沸かせた沢田は“舌好調”だった。先制されるも前半40分、右サイドからのロングスローでDF二階堂の同点弾の起点に。後半26分には自身のロングスローのこぼれ球で左クロスをあげ、逆転弾につなげた。青森山田の「投手」は、15年度の原山海里(現東京学芸大3年)と16、17年度の郷家友太(現J1ヴィッセル神戸)に続く3人目。「3代目ロング・スロー・ブラザーズです」とさわやかに笑った。

ロングスローを覚えたのは、高1秋の岩手国体前。「武器を身につけたい」と練習で投じたところ思いのほか飛び、「持ってるな、と思いました」。投球練習は調整程度にとどめ、先代の動画を研究。トレーナーの指導のもとストレッチポールで肩甲骨の可動域を広げ、ブリッジで腰回りを柔らかく改造した結果、飛距離をニアポストから中央付近まで伸ばした。

両膝靱帯(じんたい)が緩んでおり、入学後はケガ続きだった。限界を迎えた17年末、右膝内側側副靱帯を断裂。手術後は歩くこともできなかったが、リハビリを経て昨年6月に復帰した。選手権予選では出場機会がなかったが、大会直前に黒田監督からスタメン起用を伝えられた。期待に応える活躍で「最初で最後の大舞台。今サッカーが楽しい」と笑顔をはじけさせた。

プロ志望だが、卒業後の進路は未定。「この選手権が勝負。どうかお願いします。売り込んでください!!」。青森山田を優勝に導きJリーグ入りするシンデレラストーリーは、頭の中でできあがっている。【杉山理紗】