このほど始まった新コラム「ぜじんが行く」。初回は鹿島アントラーズを、鈴木満常務取締役強化部長(61)の言葉を中心に紹介した。2時間以上も丁寧に取材に応じてくれたことに感謝したい。その中で、書き切れなかったものを、ここで紹介したい。

Jリーグが開幕した。鹿島、川崎フロンターレ、FC東京、浦和レッズなど、シーズン前に優勝候補として名前が挙がっていたチームは、そろって勝てなかった。前線にビジャ、イニエスタ、ポドルスキの「VIPライン」を完成させたヴィッセル神戸は黒星発進した。J2から昇格した大分トリニータが、アジア王者・鹿島をアウェーで2-1で破る波乱も起きた。

ここ数年、Jリーグは優勝の行方が最終節までもつれることが目立つ。Jリーグ事務局は「リーグ全体の力が拮抗(きっこう)してきた。最後まで目が離せない」と喜ぶ。しかし私は、ほぼ毎年繰り返される、最終節の優勝争いに疑問がある。柏レイソル(11年度)やガンバ大阪(14年度)は、J2から昇格した年にJ1を優勝している。まともなリーグなら起こりえないことが起きている。

私の疑問に、サッカーに関わって50年の鈴木満常務がクリアな答えを出してくれた。

鈴木満常務 これからその現象は続くだろうな。過去には7年間、うちとジュビロ磐田が優勝を分け合った時代があった。ベテランと中堅、若手のバランスが良くて、世代交代もスムーズに進んだ。でも、もう上位1、2チームが決まって優勝争いする時代ではなくなった。なぜならシステム上、長期計画で選手を育てることがほぼ不可能になったから。

海外志向が強い選手が多く、Jで活躍したら目を海外に向ける。だからクラブは選手と3年契約などの複数年契約を結ぶ。でもその契約期間が終わったら、クラブに止める方法はない。3年活躍したら4年目はもういない。当然、世代交代はできない。チーム力を維持するため、外国籍選手はもちろんだが、J2や他のクラブから選手を補強するしかなくなった。その補強の成否が、成績に影響する。

力の拮抗(きっこう)を良しとするか。それとも、欧州や南米のビッグリーグのように、トップの数チームに他のチームが挑戦する仕組みがいいか。自分の答えは後者だが、前者の意見を否定はしない。ただ長期計画の若手育成、世代交代ができなくなった現状は、再考の余地があるのではないだろうか。【盧載鎭】

◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、ソウル生まれ。88年に来日し、96年に入社。21年間サッカー担当、2年間相撲担当。最近の日韓関係悪化には心が痛むが「政府間の問題を私に聞かれても…」と思う日々。2児のパパ。