川崎フロンターレがシドニーFCに1-0で競り勝ち、今季ACLで初勝利を挙げた。後半36分に投入されたMF斎藤学(28)が2分後の38分に、ゴール前で相手のクリアボールを右足で流し込み値千金の決勝ゴールを決めた。昨季のACLは1勝もできずに終わり、今季も初戦の上海上港(中国)に敗れていた。1次リーグ突破へ、貴重な勝ち点3を手にした。

   ◇   ◇   ◇

公式戦4戦未勝利のチームを救ったのは途中出場の斎藤だった。後半36分、最後の交代枠でピッチに入った。その2分後。MF中村の右サイドからのクロスが相手DFの足に当たり、流れたボールを右足でゴール右隅に流し込んだ。「冷静ではなかったです」と笑わせ、「練習ではふかすんですけど、サポーターやいろんな人の思いが乗ったのかな」と振り返った。

川崎Fに加入2年目。昨季は右膝前十字靱帯(じんたい)損傷のリハビリからスタートしたが、今季は開幕からけがをしない体づくりを掲げ、1月にMF鈴木とグアムでの主に体幹を鍛える自主トレに励んだ。5日間のプチ断食にも挑み、体を整えた。体だけでなく頭もクリアにした。川崎Fのパスサッカーと斎藤の持ち味であるドリブルをどう生かすか。昨季はリーグ戦16試合の出場にとどまり「もっと頭を使わないといけない。自分がサッカーしてきた価値観を一から勉強し直した」ともがいた。

昨年末から、頭でサッカーをすることを練習で継続。この日の得点場面では、ゴール前で味方FWの1列後ろのスペースが空くことを計算した上で陣取った。「自分ではあの場所にいれたことがうれしかった」と手ごたえ。「試行錯誤の日々を過ごして成長を感じている。1点取ったのは何か変わるきっかけになったかな」と話した。

グアムでともに練習したMF鈴木も途中出場し、攻守に貢献した。鬼木監督の采配が的中する形となった。昨季は1勝もできずに終えたACLで、伏兵の活躍で勝ち点3を手にした。約1カ月ぶりにトンネルを脱出し、17日のG大阪とのリーグ戦へ向かう。【岩田千代巳】