清水エスパルスの絶対的エースが涙の完全復活だ!! FW鄭大世(35)がジュビロ磐田との「静岡ダービー」で前半36分にヘディングで先制点。2点リードの後半に1失点するも、リードを守りきった。チームも開幕7戦目で今季初白星。勝利に貢献したベテランは、歓喜のうれし涙を流した。

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込み上げてくる感情を抑えきれなかった。試合後、鄭は4000人以上のサポーターから沸き起こった大声援に顔を上げられなかった。「勝利の中心に自分がいることがなつかしかった」。35歳のベテランは人目をはばからずに号泣した。

武器を最大限に生かした。前半36分、自陣からのロングボールで競り勝ち、ゴール前に突進した。「行けば何か起こる予感はあった」。相手DFのクリアボールが高々と上がると、GKの動きを見ながらヘディング。ボールがゴールに吸い込まれ、何度も拳を握り締めた。ゴールは先月17日の神戸戦以来3試合ぶり。ベンチから勝利を見届けたヒーローは「みんなが同じ気持ちで戦えた結果」とチームの勝利を強調した。

「苦しい時期を思い出したら、止まらなかった」。苦しみや結果が出ない焦り。試合後の涙はさまざまな思いが入り交じっていた。17年は主将として引っ張ったが、昨季はどん底だった。結果を残してもベンチを温める日々。FWドウグラス(31)ら助っ人の活躍もあり、リーグ戦はわずか3得点にとどまった。

自信を失いかけた瞬間は1度や2度ではない。それでも、初心を忘れなかった。「年齢を考えればサッカーをやれる時間は少ない。楽しむことを心掛けた」。苦しい時は、普段から思ったことを記している手帳を見返した。「振り返ると、その時の感情を思い返せるから」。腐らずに自らを奮い立たせてきた。

今季初白星でチームも最下位を脱出。鄭は「まだ1勝。次は連勝したい」と言った。充血していたエースの目には、力強さが戻っていた。【神谷亮磨】