浦和レッズFW興梠慎三(33)が湘南戦の前半3分に今季10点目となる先制ゴールを挙げ、8年連続2桁得点のJ1新記録を達成した。

12年に鹿島アントラーズで11得点したのを皮切りに13年の浦和移籍後も得点を量産、前人未到の金字塔を打ち立てた。試合は1-1で引き分けた。

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その時は、開始3分に訪れた。興梠は猛然とゴール前へ走った。FW武藤からグラウンダーのクロスが入ると、DFを引き連れながら右足つま先で鮮やかに流し込んだ。J1新記録となる8年連続2桁得点だ。8月4日の名古屋戦で王手をかけてから3試合の足踏みを挟んでの達成に「歴史に名を刻めてうれしい」と喜んだ。それでも後半45分に失点しての引き分けには「正直、勝ちたかった」と心の底からは笑えなかった。

25歳で迎えた12年から8年連続。鹿島時代にメッシーナからの誘いを即決で断るなど、国内への思いだけを貫いたことで大記録が生まれた。その鹿島から宿敵の浦和へ移籍した際、サポーターから「来るな」「お前なんか不要だ」と書かれた手紙がクラブハウスに10通以上も届いた。それでも「覆すのが楽しみ、やりがいになった」。ペトロビッチ監督から1トップに固定され、ドリブラーからゴール前で仕事をするストライカーに変貌。この日も「自分で突破してゴールを決める選手ではないので、みんなのおかげ」と感謝した。

その恩師が17年途中に成績不振で解任されたことは「サッカー人生で最も悔しかった出来事」と語り、起用が正しかったことを証明するためにもゴールを取り続けると、自らに課した。7月には福田正博氏を抜くクラブのJ1歴代最多92点目。7年間でサポーターからの信頼をつかみ取った。

得点ランクは首位まで3点差の4位タイ。初の得点王獲得も狙える位置につけたが「チームをタイトルに近づけたい」と個人の目標は、ここで封印。偉大な記録を樹立しても謙虚に、ひたむきに興梠はゴールを狙い続ける。【松尾幸之介】