アビスパ福岡は17年夏の九州北部豪雨被災地の復興支援の願いをモチベーションに、執念の引き分けに持ち込んだ。

福岡の選手会が中心となり、昨年から被害が甚大だった福岡・朝倉市や東峰村への支援を目的に活動してきた。2年目の今季は、開幕から苦戦を強いられ、J2残留も危ぶまれる下位での争いに巻き込まれている。

だがこの日、J1昇格を狙う好調のファジアーノ岡山を相手に燃え、復興支援の願いも胸に意地を見せた。0-1で迎えた土壇場の後半41分。サイドチェンジから相手を揺さぶった猛攻からチャンスが生まれ、ついにMF松田力(28)が自分で奪ったPKを右足で決めて追いついた。松田が「千葉移籍後のホーム岡山戦でPKを外して以来」と苦笑いした15年J2ジェフ千葉時代以来4年ぶりのPK。蹴る瞬間、さすがに「久々で緊張した」という。だが「練習していたんで自信はあった。目標は2ケタ得点なので、しっかり決められて良かった」。今季7得点目となる値千金の同点ゴールだった。

決めた瞬間、思わず左手ガッツポーズが飛び出した。気合十分だった松田にとって、被災地への思いも力になっているという。「この順位で(被災地に)何ができるかというと、必死に戦い頑張る姿を見せるしかない。勇気づけるため、今日みたいな試合で諦めない姿を見せていきたい」。この日も目の前の試合に必死だった。

福岡の被災地がらみの直近の活動では、8月31日のホーム愛媛FC戦に朝倉のサッカーチームの子供や保護者ら約65人を招待したばかり。福岡は今季、「感動と勝ちにこだわる」をチームスローガンに戦っており、下位に沈む現状でも最後まで諦めず勇気や元気を与え続ける姿勢があった。

今後は、11月に福岡選手会などによる朝倉地区でのサッカー教室開催が予定されている。選手会長を務めるDF実藤友紀(30)は「順位に左右されるのではなく、みんなが地域貢献活動を行っていきたい思いがある。こういう順位でもやることは変わりない。もっと地域に根づいたチームになっていかないといけない」と話した。

残り9試合。まだ最後まで予断を許さない成績ではあるが、福岡県の復興のシンボルとなって最後まで死力を尽くす。