北海道民が待ち望む「その時」は、目の前だ。コンサドーレ札幌は26日、埼玉スタジアムでのルヴァン杯決勝で川崎Fと対戦する。25日は会場に隣接する第2グラウンドで前日公式練習を行った。札幌2年目のミハイロ・ペトロビッチ監督(62)は就任時に掲げた初の国内3大タイトル獲得へあと1勝に迫り、「その時が来た」と選手を鼓舞した。クラブ創設24年目の夢をかなえ、北の大地に歓喜を届ける。

   ◇   ◇   ◇

気温15度、降りしきる雨の中、体を動かす18人を、ペトロビッチ監督がじっと見つめた。約40分で軽めの練習を終えると、選手を集めて語りかけた。FW鈴木武蔵(25)が明かす。「『今、ちょうどその時が来た』と、(監督が)練習終わった時に言っていた」。昨季の就任直後、選手に「タイトルを取るチームになる」と宣言した。今季ルヴァン杯1次リーグ突破時にもあらためて掲げていた「その時」を、満を持して迎えようとしている。

“その象徴”に、心奪われた。出席した会見で、目の前に置かれていた優勝カップを見て「もう1個カップはないのですか? 2つだったらうまく分け合って持って帰れるのですが」と笑った。もちろん奪い合って勝ち取る覚悟だ。「我々のチームはとにかくベストを尽くす準備はできている。このカップを手にしたい」と力を込めた。

選手に求めるのは平常心だ。札幌が初めて戦う決勝は、川崎Fは5度目。リーグ戦2連覇中の勝者のメンタリティー、経験の違いは間違いなくある。だからこそ「高すぎるモチベーション、強すぎる思いは間違った方向に進む」。練習を再開したオフ明けの22日。決戦へ向けた週の始まりだった。練習開始前に行ったミーティングでは、敗れた18日リーグ・セレッソ大阪戦の反省を行った。「『カップ戦を勝っているからいい』ではダメだ」。どんな試合でも勝利を求め、走り、戦い、規律を守る姿勢を見せるよう、呼びかけた。その姿は指揮官の“いつもどおり”だった。

ルヴァン杯得点ランキングトップの鈴木は「この位置まで来られたのは監督と選手と関わっている人々のおかげ。何としてもタイトルをつかんで札幌に帰りたい」。札幌の歴史が変わる「その時」は、26日午後1時5分、幕を開ける。【保坂果那】