国内3大タイトルの1つで、川崎Fが初優勝を遂げた。

2-2から突入した延長を3-3で終え、PK戦を5-4で制した。5度目の決勝舞台で、途中出場のFW小林悠(32)が、延長後半にチームを救う同点弾を放った。PK戦は先に失敗したが、GK新井章太が2連続でキックを止めて、劇的勝利を手にした。賞金は1億5000万円。最優秀選手にはGK新井が選ばれた。

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苦しみぬいた末のタイトルだった。2度のリードを許し、数的不利に陥る窮地で延長を戦い抜き、PK戦も先行されながら勝利。途中出場で2得点を決めた小林は「何とか勝たせられて主将、FWとしての役割は果たせたかな。上でカップを掲げられたのはすごくうれしかった」と笑った。

20日の練習試合で右足首を捻挫し、ベンチスタートだった。「タイトルを取らないといけないチームになっている中、このタイトルは最低目標というか義務」と強い思いを胸に秘めていた。

前半10分に先制を許した。セレッソ大阪に敗れた2年前の決勝と同じ序盤の失点だったが、小林は冷静だった。自ら「タイトルを決める試合で点を決めるのは自分」と言い聞かせ続けた。1-1の後半28分にピッチに入ると、同43分に宣言通りの勝ち越しゴール。これで逃げ切れるかと思いきや、後半終了間際に追いつかれた。延長戦で退場者を出し、勝ち越された。それでも「自分が点を取るから大丈夫」と仲間に声をかけ、起死回生弾を決めてみせた。

心が折れそうになる展開も、下を向くことはなかった。2年前に絶望的な状況からリーグ優勝を手にした経験が支えになった。小林は「こうやって優勝してきたし。どんな展開だよ、と思いながらやっていて勝ち切れたのは大きい。僕だったり(中村)憲剛さんだったり、タイトルへの思いは正直、一番強いなと思っていた。やっぱりメンタルですね」。

17、18年とリーグ連覇しているが、ルヴァン杯は過去4度準優勝に終わっていることから「一発勝負に弱い」とのイメージがついて回った。25日の練習後、小林は「シルバーコレクターとか言われてきたけど、それはオレたちじゃない。明日、オレたちはこのメンバーで絶対に歴史を塗り替えよう」とチームを鼓舞した。

歴史を変える1勝に「もうシルバーコレクターと言われないと思う」と“卒業宣言”も飛び出した。まずは「1冠」を手にした。小林は「毎年、何かタイトルを取っているチームは強いという印象がつく」。常勝軍団への道をまた1歩進んだ。【岩田千代巳】

▽川崎F・鬼木監督 決して簡単な試合ではなかった。後半ロスタイムに同点にされて選手の気持ちも落ちた。さらに退場もあって難しい試合になったが、最後まで諦めない姿勢でなにかを起こせると、選手から教えてもらった。

▽川崎F・MF阿部 すごい試合だった。何回負けたと思ったか。みんなが諦めずに戦うことができた。

▽日本代表・森保監督(ルヴァン杯決勝を視察)「すごい試合でしたね。最後はPKで優勝と準優勝に分かれてしまいましたが、両チームとも、タイトルを獲得するにふさわしいだけの戦いを見せてもらいました」

▼川崎Fの記録メモ FW小林が途中出場で2得点。ルヴァン杯の決勝で2ゴールは広島FW佐藤寿人とG大阪FWパトリックが14年に記録して以来、5年ぶり史上8人目だが、過去7人はいずれも先発出場。途中出場で2発は今回の小林が初めて。

◆ルヴァン杯 天皇杯、J1リーグ戦とともに3大タイトルの1つで、前身は1992年(平4)開始のナビスコ杯。最多優勝は鹿島の6回、昨季まで10年は鹿島3回、東京、磐田、柏、G大阪、浦和、C大阪、湘南が1度ずつ。優勝賞金1億5000万円(準優勝5000万円)