冬の風物詩でもある全国高校サッカー選手権が98回目を数える間に、高校生をとりまく環境は変化を続けている。大会期間中、日刊スポーツでは「高校サッカーの現在地」と題して、現状、課題など高校生、ユース年代のサッカーについて、随時連載する。

  ◇   ◇   ◇ 

高校サッカー界でもIT活用の進化は著しい。選手がほぼ全員スマホを所持する時代。プロに限らずユース年代のチームでも、GPSといったツールを用いて選手の体調を確認することなどは珍しくない。

分析アプリで人気の高いものが「SPLYZA」。準決勝に残った4校のうち帝京長岡(新潟)と矢板中央(栃木)が使用する。今大会の出場48チームのうち5校が導入し、2校が4強に勝ち残った。

特徴は選手参加型のツールであること。これまでは、分析といえばチームスタッフが行い、選手に伝えられるものだった。このアプリでは、スマホで映像シーンにコメントを残したり、「コーナーキック」のように好きな言葉によって映像をシーンごとに分類し、すぐにアクセスも可能だ。指導者だけでなく選手自身が映像を見て気づき、指摘し合うことで理解が深まる仕組みだ。

矢板中央は選手40人がアカウントを持って運用している。金子文三コーチは「いくつかの戦術分析ツールを試してきたが、これが一番使いやすい」と話す。実際に、準々決勝の前には四日市中央工の試合映像を見て、サイド攻撃に特徴があると選手同士で意識を共有。サイドバックが意識的に裏のスペースを消し、3戦8得点の相手を無失点に抑えた。

アプリの開発に携わった土井寛之氏(44)は「分析はやりたいが時間がない、という声が多かった」と振り返る。専属アナリストを抱えるプロクラブと違い、高体連では分析も監督らの仕事。数十人の指導者の意見を聞いたところ、教員でもあるため時間が確保しづらい実情があった。中には映像を確認するため「徹夜」との声もあった。

そこで「分析はスタッフの仕事」という概念を捨て、生まれたのが選手参加型のアプリだった。選手自身が見て考え、意見交換をする時間が生まれるなど相乗効果がある。現場にフィットしたアプリの役割は作業効率の向上にとどまらず、チーム作りをサポートする存在になっている。【岡崎悠利】