Jリーグは6月27日のJ2再開とJ3開幕、7月4日のJ1再開を発表しました。約4カ月ぶりに迎えるその時を前に、日刊スポーツでは歴代のJリーグの選手、監督、関係者から生まれた言葉をピックアップ。あの日、あのときの印象的なシーンを振り返ります。

「ゴールの味を覚えた」。

2013年のシーズン開幕前の1月、雪の降り積もる新潟で、FW川又堅碁(当時23歳)は自信に満ちあふれていた。前年の12年は期限付き移籍先のJ2ファジアーノ岡山で18ゴール。その武者修行からJ1アルビレックス新潟に復帰することになり、「点の取り方というか、ゴールの味を覚えた」と言った。

その言葉通り、たくましさを増した川又は大ブレークし、新進気鋭のストライカーとして注目を集めた。最終的にJ1得点ランク2位の23ゴールを挙げた。

10月28日のホーム、ビッグスワンでの湘南戦。川又は当時の日本代表アルベルト・ザッケローニ監督が視察に訪れた試合でハットトリックを達成した。後半27分、右サイドのMF田中亜土夢(現HJKヘルシンキ)からペナルティーエリア内にパスが出されると、待ち構えていたMFレオ・シルバ(現鹿島アントラーズ)がシュート体勢に入った。だが、そこに川又が割って入るように電光石火のスライディングシュート。レオ・シルバがフリーで「スルー」と叫んでいたが、おかまいなし。3点目を奪取した。

味方のおいしい場面を横取りした点取り屋は「レオが『スルー』って言ったのは聞こえたけど、どうしても3点目が取りたかった」とニヤリ。日本代表監督の御前試合で、見事にハットトリックを達成し、シーズン20ゴールに到達した。前年J2所属の日本人選手が翌年のJ1で20ゴール以上はJリーグ史上初の快記録となった。

貪欲にゴールを目指し続けたストライカーはその後、ケガもあり、日本代表には定着できなかった。それでも、14年の名古屋グランパス移籍後は15年に9ゴール、17年のジュビロ磐田移籍後には2年連続2桁ゴールをマークするなど結果を残した。

日本代表の国際Aマッチでは通算9試合1得点だが、J1、J2のリーグ戦通算得点は88点。大台の100得点まであと12点に迫っている。ゴールの味を知り尽くした30歳のFWは今季、J2のジェフユナイテッド千葉で再起を期す。