情報の氾濫で、取捨選択が難しい時代だ。テレビ、新聞、ラジオのマスメディアだけで情報入手する時代から、ユーチューブやSNS、ネットと、情報入手の選択肢が増えた。検証されてないものもあり、フェイクニュースも少なくない。

日本のメディア信頼度は世界23位。英オックスフォード大ロイタージャーナリズム研究所が6月、世界主要40国の国民を対象にアンケートを実施し、日本は37%の国民が自国報道を信用するとの結果が出た。お隣韓国はどうか? 4年連続の最下位。21%の国民しか信用していない。報道内容をうのみにせず、各自が独自に精査して判断する。誤った情報の拡散を防止するためにも、今の時代では大事な「自己防衛」なのかもしれない。

偽情報のフェイクニュースは悪だが、Jクラブにとっては、対戦相手がチームの情報を誤解、つまりフェイクニュースをつかんでくれた方が有利になる。だから、肝心な情報は隠したがる。セットプレーの練習を非公開にしたり、クラブによってフォーメーション練習も隠そうとする動きはあった。

指導者が最も知られたくないものはセットプレー。ニアに走る選手、ファーに逃げる選手、タイミングをずらして中央に突っ込む選手など、相手に見せたくないものはたくさんある。トリッキーなサインプレーが事前に相手に知られると、破壊力はなくなる。カットされて逆襲を許す危険性も増加する。

非公開練習。かん口令を敷く。時にはウソをつく。Jリーグを取材すると、よく聞く話。これらの行動は、正しい情報を相手に与えないため、つまり勝つためには当たり前の措置。私は後輩に「選手や監督に事実と違うことを言われてもウソとは思うな。“あの人はウソつき”と思ってしまうと、お互いに心が閉ざされる」と伝えている。

コロナウイルスの感染拡大で、非公開練習が日常となった。サポーター、報道陣がいない練習場では情報漏れを恐れることも「対戦相手の目」も気にすることはない。集中できる環境で、どれだけトリッキーなFK、CKなどを試して磨きあげ、披露することができるか。これも、コロナ禍のJリーグを楽しむ方法の1つだ。【盧載鎭】

◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、ソウル生まれ。88年来日、96年入社と同時にサッカー担当。2年間は相撲担当。サッカーにかかわって23年目に突入。