第99回全国高校サッカー選手権は、31日に首都圏で開幕する。今年は新型コロナウイルスの感染拡大により、高校スポーツも停滞を余儀なくされ、夏の甲子園や、インターハイが中止になった。感染防止を徹底して開催される今大会。日刊スポーツでは「見えない敵を乗り越えて」と題し、注目校を紹介する。

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2大会連続11度目の出場となる神戸弘陵が、前回大会の雪辱を果たす。1年前、4強入りした帝京長岡(新潟)に3回戦で敗れ、16強に終わった。今大会も勝ち上がることができれば、8強入りを懸けて、1月3日に帝京長岡と再戦する可能性がある。DF木谷亮太主将(3年)は「帝京長岡を意識してしまうけど、まずはサッカーの質を上げて本番に臨みたい。去年の成績は超えたいです」と意気込む。

兵庫県大会では、5戦32得点1失点と得点力の高さとともに、堅実な守備も光る。DF小倉慶士(3年)は、予選全試合フル出場で堅い守りに貢献している。

静岡県出身の小倉は、中学時代に所属した清水エスパルスSS静岡のコーチの勧めもあり、神戸弘陵に進学。校内の寮や、他のサッカー部員が暮らす私営の寮には入らず、アパートでの1人暮らしを選んだ。できるだろうと思っていた家事と学校生活の両立は、想像したよりも大変で「栄養は一応考えながらですけど、お弁当を買うことが多いですね」と話した。

1人暮らしを選んだのには理由があった。中学2年生の時、祖母ひとみさんをがんで亡くした。生粋のおばあちゃん子だった小倉は、61歳という若さでの祖母の死を受け入れられなかった。しかし「そんな自分が情けなく、自分を変えたいと思った」。心を奮い立たせ、1人で兵庫に乗り込んだ。

これまでの最高成績は93年大会のベスト8。31日の初戦は、岩手の伝統校でもある遠野(岩手)と対戦する。J3今治への加入が内定しているMF松井治輝(3年)や、兵庫県予選の2試合でハットトリックを達成しているFW牧野隼也を擁し、さらなる高みを目指す。【佐藤あすみ】

◆神戸弘陵 1982年(昭57)創立の男女共学私立校。硬式野球部、サッカー部、バレーボール部、剣道部を強化クラブに指定。主なOBは元日本代表MFの奥大介さん、柏FW江坂任。プロ野球オリックスの飯田優也ら。サッカー部員は115人。