第99回全国高校サッカー選手権は、31日に首都圏で開幕する。今年は新型コロナウイルスの感染拡大により、高校スポーツも停滞を余儀なくされ、夏の甲子園や、インターハイが中止になった。感染防止を徹底して開催される今大会。日刊スポーツでは「見えない敵を乗り越えて」と題し、注目校を紹介する。

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激戦区大阪を勝ち抜いた履正社は、6大会ぶり3度目の大舞台で3年生の力を結集する。選手権登録メンバーは30人。うち、25人が3年生だ。受験勉強のため早めに引退を決断した2人を除けば、3年生全員がメンバー入りした。平野直樹監督(55)は「レギュラー争いに本気で取り組んで、いい競争をしてくれた。誰が出てもチーム力が落ちないし、(メンバーに)入れる理由はあっても落とす理由がなかった」と3年生を強く信頼する。

来季、J1湘南加入が内定しているMF平岡大陽(3年)も「やるときはやる。できない時もあるけど、みんなが危機意識を持てる状態を3年間積み上げてきた」と自信を持つ。

そんな中、同学年の他の選手より遅れて今年9月の試合でメンバー入りを果たしたのがMF山口奏七(そなた、3年)だ。身長162センチ、体重55キロと小柄だが、自分なりの「生きる道」を追求してきた。

「体格で当たり負けするのは多少仕方ない。それならボールコントロール、セットプレーでのキックを突き詰めようと思った。それが僕がサッカー選手として生きる道」

チームではキッカーを務め、大阪大会決勝の金光大阪戦でも、CKから決勝点をアシストした。

父が音楽好きで「奏七」と命名された。

「人と同じは嫌なんで、気に入っています」

サッカーでも、生まれ持った個性と磨いた強みを生かし、ピッチで自分のリズムを奏でる。

19年夏に全国優勝を果たした野球部に対し、サッカー部は3度目の選手権出場で過去最高成績は8強止まり。3年生を中心とした団結力と、激戦区大阪の代表として、悲願の全国制覇へと突き進む。【佐藤あすみ】

◆履正社 1922年(大11)に大阪府福島商業学校として創立した私立校。83年から現校名。サッカー部は13年に選手権初出場。主なOBに清水MF奥井諒、札幌DF田中駿汰、鳥栖FW林大地。プロ野球ではヤクルトの山田哲人、阪神の井上広大、DeNAドラフト2位の小深田大地ら。サッカー部は部員数75人。