首位川崎Fが2位名古屋との天王山を4-0で制し、開幕から13戦無敗の勝ち点35とした。東京五輪世代のU-24日本代表FW旗手怜央(23)は、右ハムストリングの負傷明けで5戦ぶりの先発だったが、前半3分に貴重な先制点を挙げた。複数のポジションをこなす中で、今季3点目。誰かの模倣ではない、オリジナルの選手像を作り上げている。なお川崎Fは5月4日、今度はホームで名古屋との第2ラウンドに臨む。

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いい意味で、旗手の本職が分からない。FW、ウイング、中盤、サイドバックと、どのポジションも器用にこなし、流動的に動いて得点に絡んでいく。この日はインサイドハーフで先発すると試合開始から2分55秒、右足シュートで豪快な先制ゴール。名古屋の堅守をあっさりと破った。

「点が入ってホッとした。あれが名古屋のゴールだったら、守備を固められて難しい展開になっていた」。後半途中にMF三笘が下がると、今度は左ウイングに入った。左サイドバックで先発した試合では、なぜか右サイドからゴールを決めたこともあった。一貫しているのは「どのポジションでも点を取りたい」という、アタッカーの気概だ。

昨季終盤、負傷したDF登里に代わって人生初の左サイドバックを務めた。同ポジションで天皇杯優勝も経験し、今年3月のU-24日本代表アルゼンチン戦でも同じ位置で出場した。目標のサイドバックはいないし、映像を見て研究しているわけでもない。「どのポジションでも『あれ旗手だな』『あいつすごいな』と思ってもらえるプレーがしたい」と前向きにトライし、唯一無二の選手像を確立させた。

中学時代はボランチで、個人技を重視する静岡学園では、ドリブルやシュートの技術に磨きをかけた。しかし「めちゃくちゃテクニックのある選手になろうとしても無理」と気づき、持ち前の身体能力も生かした「オリジナル」のプレースタイルを構築した。今季からは「高校3年間がなければ今はない」と静岡学園時代の47番を背負い、初心を忘れずにプレーしている。

同じ大卒の三笘と比較されることも多かったが、「刺激は受けるけど、自分は自分」とブレずに取り組み、評価は急上昇中。東京五輪は3人のオーバーエージ(OA)枠を含め18人という少数ゆえ複数のポジションをこなせる旗手の価値は高い。「五輪に出るというより、五輪に出て活躍したい」と話しており、その先には22年W杯カタール大会も見据える。首位を走る川崎Fには、頼れるマルチロールがいる。【杉山理紗】

◆旗手の出場位置 登録はFWだが、複数のポジションでプレー可能。今季は開幕から左サイドバック(SB)として7試合連続で先発し、同位置の主力DF登里がけがから復帰した4月3日の大分戦では中盤のインサイドハーフで出場した。昨季は本職のFWとして左サイドで6試合、右サイドでも4試合に先発するなど左右も問わない。東京五輪世代のU-24日本代表で通算8得点を記録しているアタッカーだが、クラブでの活躍が評価され、3月26日のアルゼンチン戦では左SBで先発した。

◆旗手怜央(はたて・れお)1997年(平9)11月21日生まれ、三重県出身。FC四日市ジュニア-FC四日市-静岡学園-順大-川崎F。J1リーグ通算41試合8得点。171センチ、70キロ。「あこがれ」の父浩二さんは、高校野球の名門PL学園で桑田&清原の1学年上の遊撃手として春、夏の甲子園でともに準優勝に輝いている。