八村塁に間違われた男。東京オリンピック(五輪)で「本家」と“共演”なるか-。浦和レッズのGK鈴木彩艶(ざいおん)が、東京五輪世代のU-24日本代表に、18歳ながら“飛び級”で選ばれた。もちろん最年少での選出。メンバー27人の中で、唯一の初招集となった。「自分の強みを存分に発揮し、オリンピック本大会に出場できるようにアピールします」とクラブを通じ、意気込みを口にした。

190センチ、91キロ。ガーナ人の父と日本人の母のもとに生まれた。そんな若武者が、街を歩いている時だった。過去に「八村塁さんですか?」と声を掛けられたことがあった。NBAウィザーズで活躍する八村塁(23)は203センチ、104キロ。確かに体格は似ている。八村はベナン人の父と日本人の母の間に生まれた。ともにアフリカ出身の父を持ち、ともにハーフ。共通のルーツを持つ2人は競技も、戦う地も違えど、日本で開催されるオリンピックへ歩みを進める。

日本人初のNBAドラフト1順目指名を受け、今や日本人初となるNBAプレーオフ進出を決めた八村は、順調に東京五輪候補の20選手の中に名を連ねる。まだまだ知名度では負ける鈴木。日々のJリーグ、そして今回のU-24での活動を経て、27人のメンバーとの競争に打ち勝ち、五輪の切符を勝ち取らねばならない。

鈴木は「浦和のGKでレベルは一番下。1個1個のレベルを上げていかなきゃいけない」と足元を見つめる。それでも、22日に行われた15節の神戸戦(埼玉)で、史上2人目となるJ1デビューからの3戦連続完封を記録した。95年のGK川口能活(横浜M)以来、26年ぶりの快挙。着実に成長の跡を刻む。ロドリゲス監督も「五輪代表の最終リストに残ってほしい。将来的にはA代表、浦和で定着できる選手」と将来性を高く評価する。

東京五輪のサッカー日本代表の初戦は、7月22日(対南アフリカ)。この日で18歳335日となる鈴木が出場すれば、04年アテネ五輪のFW平山相太(19歳67日)を抜いて史上最年少記録となる。決して簡単な道のりではない。ただ、その可能性は十分にある。

「鈴木彩艶さんですか?」。そんな風に、声を掛けられる日は、そう遠くないはず。【栗田尚樹】