川崎フロンターレの鬼木達監督(47)が、30日の鹿島アントラーズ戦に2-1で勝利し、J1最速の監督通算100勝を達成した。

現役時代は鹿島と川崎Fでプレー。指導者として10年から川崎Fのコーチを、17年からは監督を務めてきた。就任以来、毎年クラブにタイトルをもたらしている。

川崎Fの選手たちの話に耳を傾けると、「オニさんがミーティングでこう言っていた」「オニさんにこういうプレーを要求されている」などと、指揮官のカギカッコがたくさん出てくる。例えば、鹿島戦で後半ロスタイムに投入され、出場わずか1分で決勝ゴールを決めたFW小林悠(33)。今季はなかなか出場機会に恵まれない中、「オニさんも、11人で勝てることはほぼないと言っている」と話していたことがあった。小林にとってこの言葉が、どれだけ支えになったことだろう。鬼木監督には“言葉の力”があるように思う。

なぜ、選手の胸にスッと届く言葉が出てくるのか。鬼木監督と現役時代ともにプレーした、川崎F強化部の伊藤宏樹氏(42)は「鬼木さんは『ごまかすのが嫌いだ』と言っていた」と明かす。

現役時代の鬼木監督は、主将として、言葉や気持ちでチームを引っ張る“兄貴肌”だった。伊藤氏も何度か、本気で怒られたことがあったそう。伊藤氏は「相手に本気の言葉をぶつけることを大事にしている人」だと感じていたという。

指導者になっても、そのスタンスは変わっていない。「変わらないのが一番の魅力。これだけ優勝して周りから評価されても、常に向上心をもち、チームを奮い立たせる言葉を選手にかけ続けている。今季始動時にも『現状維持は衰退の始まり。さらに向上させていく』とずっと言っていた」。指揮官の言葉に導かれ、選手たちは常に意識を高め続けている。

  ◇  ◇  ◇

一方の鬼木監督本人は、自身の強みの1つを「割り切り」だと話す。選手時代は「負けた翌日にヘラヘラしている選手にすごく腹が立った」というが、「監督になってからは、引きずって来られるより切り替えて来てほしい。それが次のエネルギーに変わっていくと思う」と、考えが整理されたという。

勝負事だから、勝つときもあれば負けるときもある。「(選手時代より)1勝することの大変さはすごく感じるが、割り切りはどこかである。怖がらずにチャレンジしている結果、選手もチャレンジしてくれていると思う」。その挑戦が、開幕から20戦負けなしという記録に結実している。【杉山理紗】