鹿島アントラーズは天皇杯でも川崎フロンターレに屈した。今季のリーグ戦は、後半アディショナルタイムに失点し2戦とも惜敗だった。特に9月22日のホームでの川崎F戦は、ここ数年で最も、王者を土俵際に追い込んだだけに、一発勝負の天皇杯での再戦はまさに、注目の一戦だった。鹿島は立ち上がりから、9月の戦いの再現をイメージし、プレスをかけようとした。だが相手の「止める・蹴る」の技術、速いパスワークと、各選手が複数のパスコースに顔を出すポジショニングで、プレスは無力化された。

左サイドバックのDF安西幸輝は「家長選手とマルシーニョ選手が、あまり守備をせずに、僕らサイドバックを上がらせないようにするという感覚になっていた。なかなかプレスがかからず、前半はほぼ守備の時間帯だった。脇坂選手、家長選手、山根選手の三角形で飛び込めなかった。行けるところも行けなかった。嫌な位置を取ってきたなと前半は感じました」。

タイトルを取っていたころの鹿島は、我慢の時間帯で耐え忍ぶことができていたが、前半32分にセットプレーから失点。後半も早い時間に2失点した。MF荒木遼太郎を投入し、反撃に出たが時はすでに遅かった。

これで、鹿島は16年度の天皇杯を最後に、5年間、国内タイトルから遠ざかることになった。J発足後では最長の国内無冠。16年度の天皇杯は川崎Fを決勝で破ってのタイトルだった。川崎Fは鹿島に決勝で敗れてから「練習からの1歩の球際が勝負を分ける」「うまいだけでは勝てない」と日々の練習から意識が高まった。技術向上に加え、強さが兼ね備わり、5年連続のタイトルへ近づいている。

今回の対戦を見る限り、パスのスピードと質、トラップの質、目と頭の速さ(判断)、攻守の切りかえ、球際の強さで差が広がっているように感じる。鹿島の強みであるはずの「我慢」「したたかさ」が消えつつあるのも気がかりだ。荒木は、川崎Fとの差を「自分が入って起点をつくることはやっていたが、川崎さんの対応が早くて、早めにつぶされて。どんな相手にも変化できて強いチームだと思いました」と話した。鹿島の選手が今季の3敗から何を感じ、日々の練習でどんな意識をするのか。それが強い鹿島への道につながっている。【岩田千代巳】