新たな歴史を刻んだ。J2昇格初年度のいわてグルージャ盛岡が開幕戦でジェフユナイテッド千葉を1-0で下し、初勝利をつかんだ。0-0で迎えた前半26分、MF宮市剛(26)が値千金の先制ゴール。右FKからのボールに右足ダイレクトで合わせた。昨季はJ3で2位と躍進し、クラブ史上初となる「J2舞台」の扉を切り開いた。記念すべき開幕戦で堂々の完封発進。さらなる高みを目指す戦いが始まった。

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岩手がいきなりやってみせた! 1点リードのまま試合終了のホイッスルが鳴り響いた。アウェー開幕戦で千葉に快勝。就任3年目を迎えた秋田豊監督(51)はベンチ前で満面の笑みを浮かべて首脳陣らと抱き合い、記念すべき1勝の喜びを分かち合った。

秋田監督 開幕は非常に難しいゲームだと思うけど、勝てたことは選手たちの自信にもつながる。今後、J2で戦う上で、心の支えになる1勝だと思います。

鮮やかな先制点を決めた。0-0の前半26分。右FKからゴール前に入ってきたボールに、宮市が迷わず右足一閃(いっせん)。相手GKの左手をかすめたが、ゴール右隅へボレーで押し込んだ。両手人さし指を天に突き上げるパフォーマンスを披露。「(右FKからの)ボールが止まっているように見えて、うまく合わすことができたと思う」。本番前の練習試合では、2試合連続弾を決めるなど、キャンプ中から好調を維持。ここぞの大一番でも本領を発揮した。

過去の悔しさがあるからこそ今がある。クラブは昨季、J3で2位と飛躍のシーズンとなった。その一方で、自身はケガの影響で1試合だけの出場に終わった。これまで湘南、水戸、鳥取など4クラブでプレーするも思うような結果は残せず。プロの壁にぶち当たり、もがき苦しんでいた。「1度挫折したと思っている。昨年はケガの影響もあって苦しんだ。過去の悔しさが今にある」と、今季の飛躍を予感させる開幕ゴールでチームの勝利に貢献した。

岩手の「J2物語」はまだ始まったばかり。宮市は「チームに勢いを与えることができた。昨季は1年を棒に振ったので、今年は1試合でも勝利に貢献していきたい」と気を引き締めた。挑戦者の気持ちを胸に、激戦の舞台で輝きを放つ。【佐藤究】