鹿島がFW鈴木優磨(25)の今季2得点目などで神戸に快勝し、今季初の連勝を飾った。日本代表の森保一監督が視察に訪れる中、鈴木が後半9分、強烈な右足ミドル弾で神戸を突き放し猛アピールした。スイス人のバイラー監督がこの日、来日し、次節の19日の湘南戦から指揮を執る予定。監督代行の岩政大樹コーチは“リーグラストマッチ”で白星を飾り、バイラー監督へバトンを渡す。

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鈴木が森保監督の前で勝利を引き寄せる2点目を挙げた。0-1で迎えた後半9分。神戸ベンチは反撃に出ようとMFイニエスタ、サンペールの投入を準備していた。だが、鹿島はハーフウエー付近でボールを奪うと、MF土居がFW上田へロングボール。上田が落としたボールを、走り込んだ鈴木がペナルティーアーク付近から右足を振り抜いた。J1通算100試合の節目での得点に、鈴木は「あまりミドルは打たないんですけど、タイミング良く打ったら入りました」と振り返った。

今季からレジェンドの小笠原満男氏が背負った背番号40を付けピッチに立つ。練習から妥協を許さない姿勢は、小笠原氏に通じるものがある。2月24日、川崎F戦前の紅白戦。左FWに入った鈴木は、左サイドバックのDF安西との連係が合わず、さらに左サイドから失点したことで、安西と激しい口論を繰り広げた。チームメートが仲裁に入り、最後は三竿が鈴木の口をふさぎ2人を引き離す一幕もあった。

練習から本気で意見をぶつけ合うのは、勝ちたいからこそ。黄金期を築いた先輩たちも、互いに厳しく指摘しあい強くなってきた。現在、チームは若返り、タイトルの味を知る選手が少なくなっている中、鈴木が強い鹿島のDNAを再び注入しようとしている。

11年3月11日。東日本大震災では、鈴木は中学2年だった。鹿島のスタジアムも大きな被害を受けたのを覚えている。「ピッチに入るとき、今日だけに限らず、ここで健康にサッカーできるのは当たり前ではないといい聞かせて入っている。僕自身にとってもすごく思いのある日だったので、なんとしても勝ちたいという気持ちがあった」。鹿島にとって特別な日にチームに勝ち点3をもたらした。今季初の連勝で4戦3勝。スタートダッシュを決めて、バイラー監督体制へと移行する。【岩田千代巳】