熊本県八代市の私立秀岳館高で、サッカー部30代男性コーチが3年生部員に暴行して書類送検された問題で、同校は5日、初めて記者会見を開いた。生徒へのアンケートでサッカー部の暴力行為38件が判明。職員から生徒への暴力25件のうち、当該コーチは24件にかかわり、5人にけがをさせた。昨秋には生徒の顔面を足で踏みつける暴力もあった。また段原一詞監督(49)は当初、否定した生徒の謝罪動画に関与したことを告白した。同監督による生徒への暴言と動画関与を、警察が取り調べ中であることも判明した。学校側は刑事処分を踏まえ、監督、コーチの処分を決める。

30代男性コーチの信じがたい暴力行為が発覚した。

4月20日の問題発生から2週間。学校側は生徒約1000人にアンケートや聞き取り調査を実施した。サッカー部の暴力行為38件が判明。職員から生徒が25件、生徒間が13件だった。当該コーチは口の中を切る、鼻血など5人にけがをさせるなど24件に関与した。

昨秋には段原監督不在の中で練習中に生徒の顔面を足で踏みつけたり、胸をたたく、太ももを蹴る行為を行った。この行為は同監督で報告がストップ。今回の騒動で学校側が初めて知るケースも多く、自浄作用は機能していなかった。

同監督は、自身の暴力行為について「ありません」。その上で暴力件数に「僕もびっくりした。信じがたい」とした。しかし今年4月から教頭と同格の校長補佐として生徒指導にあたるベテラン教員の発言としては、あまりにも軽い。

暴力行為はサッカー部以外で職員から生徒に9件、生徒間で6件あった。同監督は日常的な暴力の存在について「子どもたちからも『事実ではない』という言葉があったが、僕も賛同いたします」と否定。本件以外の暴力動画は「ほかに見たことがない」とし、自らの責任問題を保留。再発防止に努めると繰り返した。

一方で渡部久義教頭は「毎日(暴力が)行われていたとは思っておりませんが、暴行の回数が多かったことに間違いありません」と、学校の責任を口にした。

また、選手による謝罪動画について、同監督が顔と名前を出すよう指示した、と学校側が認定した。当初は関与を否定した同監督は、その発言が虚偽だったことを認めた。同監督が部員2人を「加害者」扱いして強い口調で責めたSNS上の音声に関して、警察が現在、同監督を取り調べ中であることも明るみに出た。刑事処分次第で、重い処分が下される可能性が出てきた。【菊川光一】

<秀岳館問題の経緯>

◆4月20日 サッカー部の寮内で30代男性コーチが部員に殴る、蹴るの暴行を加える動画が拡散する。

◆同21日 八代署が午前8時25分ごろに同校を訪ね生徒3人から話を聞く。当該コーチは警察署で聴取。

◆同22日 選手11人がサッカー部公式ツイッターに謝罪動画を投稿。学校関係者の姿はない動画だった。

◆同23日 再生回数100万回を超えた謝罪動画が削除される。当該コーチが退職願を提出。23、24日のリーグ戦6試合が延期。

◆同25日 学校は集会を開いて全校生徒約1000人に説明。段原監督はテレビ生放送で謝罪した。一方で同監督が部員2人を加害者扱いし「完全な被害者はたぶんおれだけ」と責める音声がSNSで拡散する。

◆同26日 学校側は、音声が同監督の不適切発言だったことを認めて謝罪。段原監督は自宅謹慎処分に。暴行の当該コーチが書類送検されたことが判明する。

◆同27日 県協会と日本協会が学校側にヒアリング。入学前の中学3年生への暴力疑惑で警察の捜査を受けていたことが判明する。

◆同28日 5月8日まで3週連続でリーグ戦延期。

◆5月2日 日本協会須原専務理事が学校で聴取。

◆同4日 保護者への説明会で、段原監督が謝罪。