鈴鹿ポイントゲッターズのFWカズ(三浦知良、55)が、チームを天皇杯に導いた。ベンチスタートのカズは後半43分に交代出場。延長でもゴールは生まれず、0-0からのPK戦は1番手に登場して成功。抜群の存在感で流れを引き寄せて、3年連続8回目の天皇杯出場へ貢献した。

同じJFLでJ3昇格を目指すライバルとの対戦。激しいゴール前の攻防に、互いの「負けられない」の思いがあふれ、緊張感たっぷり。前節で今季最長の79分プレーしたカズが登場したのは、延長突入が濃厚となった後半43分だった。

延長前半13分にはエリア外から右足で強烈なシュート。わずかに左に外れたが、直後には右足アウトからの絶妙なスルーパスで決定機を作った。さらに、延長前半終了間際には空中戦で相手選手と交錯し、頭を強打。しばらく動けずに、スタジアムが凍り付いた。

最多の見せ場は0-0からのPK戦だった。先蹴りの三重が成功後、鈴鹿の一番手として登場すると正面上に豪快に突き刺した。「日本代表でもPKはずいぶん蹴ってきたけれど、しびれる」と話したカズ。これが、チームを波に乗せた。

カズを1番手に指名した兄三浦泰年監督は「オシムさんはPK戦は見ないと言っていたけれど」と言いながら「周りの雰囲気なども含めてチームの結束力や流れが大切。カズが大きな流れを作ってくれた」と話した。

橋本晃司主将も「カズさんが最初に決めてくれて、チームのテンションが上がった。GKも気合が入ったと思う。大きかったです」。GK池末知史が続く三重のキックをストップ。そのままPK戦勝利へ突き進んだ。

試合中のPKは数多く決めているカズだが、実はPK戦は際立って得意ではない。天皇杯で直近のPK戦は京都時代の99年。4回戦清水戦で失敗し、チームも敗れた。読売時代の92年には準々決勝のG大阪戦で成功するも、準決勝の三菱浦和戦では失敗している。それでも、カズが決めれば勢いがつくのは少しも変わらない。この日も、優勝を呼び込んだのはカズのキックだった。

3年連続の三重県制覇は、カズにとっての移籍後初タイトル。「みんなの思いが、PK戦の結果につながった」とダービー戦勝利を喜んだ。

22日の天皇杯1回戦ではチェント・クオーレ・ハリマ(兵庫県代表)と対戦する。「次の試合にしっかり勝って、Jのチームと戦いたい」。6月1日の2回戦の相手はJ1横浜、横浜FC時代のホーム、ニッパツで、鈴鹿のカズが見られるかもしれない。【荻島弘一】