ファンタジスタが、ユニホームを脱ぐ。J1昇格を決めた横浜FCの元日本代表MF中村俊輔(44)が、今季限りで現役引退することが17日までに、分かった。近日中に発表される。横浜マリノス(現横浜F・マリノス)、レッジーナ(イタリア)、セルティック(スコットランド)、エスパニョール(スペイン)など、一時代を築いた希代のレフティー。その左足で、数多くの感動を与えてきた男が、ピッチから去る。第2の道については、未定だというが、指導者も候補に挙がっている。「俊輔監督」誕生も、期待される。

日本の10番は、優しかった。ある日のこと。練習を終えると、クラブの清掃係の足元に目がいった。働きづめのおばちゃんの靴は、年季が入っていた。中村は「ぼろぼろになったね」。こっそりサイズを聞き出すと、自腹でアディダスの新品のスニーカーをプレゼントしたという。

自身はアディダスと契約を結んでいる。無料でそろえることも出来たのかもしれないが、「気持ちだから」と、真っさらなスニーカーを届けたという。スーパースターからの粋な計らい。おばちゃんのうれしかった笑顔は、言うまでもない。

清掃のおばちゃんとは、クラブハウスで毎日会うであろう。何げない日々の中では、あいさつだけで終わるのかもしれない。ただ、中村俊輔はピッチ外でも視野が広く、優しさにあふれていた。【栗田尚樹】