元日本代表FW高原直泰監督率いる沖縄SVが、FC刈谷を4-0で下し、来季の日本フットボールリーグ(JFL)昇格を決めた。

昇格へ2点差勝利が求められる中、序盤から積極的に攻撃に出た。前半13分にFW山田雄太がドリブルから右足を振り抜き、先制ゴール。同38分にも山田が左サイドでパスを受けると豪快に追加点。同42分にはFW一木立一がゴール前のこぼれ球から押し込んだ。

勢いに乗ったチームは、後半立ち上がりにもMF荒井秀賀が加点。その後も攻撃の手を緩めず、終始、試合の主導権を握った。

ベンチで戦況を見つめていた高原監督は後半25分すぎからアップを開始し、後半39分からピッチに立った。そして勝利を告げるホイッスルが鳴り響くと、歓喜の声を上げた。

沖縄SVは1勝2分けとし、勝ち点5。この後の栃木シティFC(勝ち点4)-ブリオベッカ浦安(勝ち点4)戦を前に、この時点で得失点差で両チームを上回り、2位以内が確定した。選手たちは抱き合い、快哉(かいさい)を叫んだ。高原監督は胴上げをされて、宙を舞った。

2015年冬に沖縄にクラブを立ち上げ、翌16年に沖縄3部リーグからスタート。17年に飛び級で加わった沖縄県1部を制し、18年から九州リーグに所属。

19年からJFL昇格を懸けて全国地域サッカーチャンピオンズリーグに進出するも、過去3度は1次ラウンドで敗退。今回初めて決勝ラウンドへ進出し、チャンスを射止めた。

リーグ参戦7年目でのJFL昇格。高原監督はこれまでの道のりを支えてくれた沖縄への思いや感謝の言葉を口にした上で、「長かった。目標が達成できてうれしい。ようやくつかみ取れた。次のステージに進める」。クラブでは代表兼監督兼選手という1人三役。ゼロからクラブをつくっただけに、万感の思いだった。

沖縄SVというクラブは、ただサッカーを強くするというものでなく、地域に根付き、地域が抱える問題を解決するという目的を持つ。高齢化し、後継者不足という問題を抱える農業に、クラブとして従事している。昨年9月には農業法人「沖縄SVアグリ」を設立氏、コーヒーやマンゴーなどの栽培、加工、販売を手掛けている。

そういう背景も踏まえ、「地域活性化には、スポーツ事業の両輪が大事。自分たちの取り組みをPRするためにも、サッカーでの結果も必要だった」と言い、喜びをかみしめた。

来季は全国リーグを戦うことになるが「まだ何も考えられない」。抱えるものの大きさがそこには透けてみえた。全力で駆け抜けた1年を最高の形で終え、「来年のことはまた来年考えます」と締めくくった。

くしくもFIFAワールドカップ・カタール大会が開催中。かつてドイツで「スシボンバー」と恐れられ、日本代表で23得点を記録したストライカー。自らのセカンドキャリアで新たなゴールを決めた。