Jリーグ30周年イヤーの「みちのくダービー」は、ベガルタ仙台が劇的勝利を収めた。途中出場したFW中島元彦(24)が、同点の後半ロスタイム6分に決勝ゴール。2-1で山形に競り勝ち、3試合ぶりに勝ち点3をつかんだ。これでリーグ戦での直接対決を18勝15分け7敗とした。14~19年の6季、仙台を率いた山形・渡辺晋監督(49)は、ユアスタ凱旋(がいせん)試合を飾れなかった。

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“ダービー男”中島が激戦に終止符を打った。リーグ戦で通算40度目の「みちのくダービー」。1-1で迎えた後半ロスタイム6分にドラマが待っていた。右サイドバックのDF真瀬拓海(25)が、個人技で2人をかわし、3人目を抜ききらずにパス。ペナルティーエリアで受けた中島は、トラップから素早く左足を振り、ゴール左上にコントロールショット。「その前に決定機を外し、『やばい』『終わった』と思った」という。同33分から途中出場した悔しさも最後の最後でぶつけ、「反骨精神が生んだゴール」と振り返った。

中島はダービーにめっぽう強い。J1C大阪から期限付き移籍で加入し2季目。18、19年はJ3が舞台のC大阪U-23対G大阪U-23戦で1点ずつ決め、21年にはJ1の本家「大阪ダービー」で1得点。そして、今回の山形戦でも決勝弾を突き刺した。「決めてなかったら次はベンチ外と思っていたので、自分は持っているなと」。ヒーローインタビューでマイクを向けられると「ダービーは勝ってナンボなんで。最高~!」と力強く叫んだ。

Jリーグは15日で30周年を迎える。C大阪の下部組織を経てプロ入りした中島は、身近にいたスターから刺激を受けてきた。「清武(弘嗣)選手や柿谷(曜一朗)選手が自分のサッカー人生においての道しるべをつくってくれたような存在」と力を込める。「もしJリーグがなかったら?」の問いには「格闘家っすね。多分、MMA(総合格闘技)をやってました」と笑い、サッカー選手という天職をかみしめた。

「僕も夢を与えてもらった側なので、今は夢を与え続けないといけない。今日もスタジアムに小さい子がいっぱいいて、そういう子たちが何か変わるきっかけになってほしい」

劇的弾でチームに勝利をもたらした中島は、間違いなく子どもたちのヒーローになった。【山田愛斗】

▽仙台伊藤彰監督(50、みちのくダービーに勝利し) 仙台も山形さんもいろいろな思いがあるダービーマッチだと思う。そこで勝てたことはひとつ我々にとっては大きな1勝だし、これを次につなげていきたい。

○…山形は悔しい敗戦を喫した。1点を追う後半40分、FW藤本佳希(29)がオーバーヘッドで同点弾を決めたが、同ロスタイムに被弾し、勝ち越された。古巣戦で敗れた渡辺監督は「勝利と歓喜を届けられなくて非常に申し訳なく思う。内容はどうとか関係ないので、この一戦は本当に勝たなければいけない試合だった」。試合後にはサポーターからブーイングを浴び、藤本は「ダービーは戦っている選手以上にサポーターの皆さんやクラブに関わる人の歴史が詰まったもの。勝てなくてああいう反応になるのは当然」と受け止めた。