10日のJ1リーグで首位ヴィッセル神戸は、アウェーで6位セレッソ大阪と対戦し、同門監督による初対決が実現する。

神戸吉田孝行監督(46)とC大阪小菊昭雄監督(47)は、ともに高校サッカーの名門・滝川二出身。吉田監督が1学年下という、後輩と先輩の関係にあたる。2人の初対決は、折り返しを迎えるリーグ戦の今後を占う一戦になる。

神戸吉田監督が滝川二の1年生、C大阪小菊監督が2年生だった92年度、当時の3年生が、ガンバ大阪などで活躍した木場昌雄さん(48)。J1通算223試合1得点の実績を残した名DFは、2人の関係を最も知る1人だ。

「当時は僕がセンターバックで、吉田監督は1年の夏から試合に抜てきされ、MFの小菊監督と、3人そろって公式戦に出ていた」という木場さん。

現在はDAZN(ダゾーン)で、神戸やC大阪の解説を務めることもあり「2人とは近い距離だが(仕事の立場上)僕は客観的に見ている。間違いなく、球際の激しい試合になる」と予想する。

吉田監督とは1年間、高校の寮でも一緒だった。木場さんが夜、ACミランなど海外の試合を映像で見ていると、2学年差の後輩は「僕もいいですか?」と、勉強会の輪に入ってくることが多かったという。

「勉強熱心で貪欲な姿勢は、すごく印象にある」。高校卒業後、横浜フリューゲルスなどでJ1通算356試合53得点の実績を残した吉田監督は、自然な流れで監督になった印象があるという。

1学年差の小菊監督に対しては「人なつっこく、僕ら先輩の懐に飛び込んでくる性格。ただ、プロ選手経験がなかったので、監督になるとは想像もできなかった」。愛知学院大へ進み、C大阪へは下部組織のコーチとして就職した小菊監督は、プロ選手の経験がない異例の存在として、21年8月に監督に初昇格し、話題を呼んだ。

両監督は本来、昨年8月にC大阪が4位、神戸が17位という順位で初対決するはずだった。だが、小菊監督が直前に新型コロナウイルスに感染して離脱し、2年越しで対決が実現することになる。今回は神戸が首位を快走し、昨年とは立場が逆転した。

「神戸はバルセロナ化を目指していたが、吉田監督が完全に(ロングボールの多用などで)かじを切った。大迫勇也のキープ力があるから成り立つ戦術だし、その決断はすごいと思う。イニエスタというスーパースターにリスペクトはしつつ、今いる選手の特長を考え抜いての采配です」

「小菊監督は今季、新しいシステム(4-3-3)にトライしながら、昨年までの基本ベース(4-4-2)があるから、うまくいかなくなっても立ち返り、その臨機応変さがいい。香川真司がフィジカル的にフィットしてきて、ボールをさわる回数が増え、明らかにアクセントになっている」

華やかなFWだった吉田監督はJ1での指揮は、通算34勝15分け27敗。プロ選手経験のない小菊監督は、約15年間のプロコーチ生活を経て監督に上り詰め、通算27勝14分け22敗。違う道を歩んできた2人だが、指揮官としての実績は差がない。

J1クラブの監督の座は18席しかない。実力はもちろん、運も必要なポジションに、滝川二の1学年違いの後輩と先輩が就き、上位、そして優勝を争う。両クラブが目標に掲げるタイトル獲得のために、負けられない重要な一戦。7月の退団までカウントダウンに入った神戸イニエスタだけではなく、両監督の戦いからも目が離せない。【横田和幸】

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◆木場昌雄(きば・まさお)1974年(昭49)9月6日、兵庫・南あわじ市生まれ。滝川二から93年G大阪入り。主にセンターバック、ボランチを務め、主将も経験。05年に当時J2福岡に移籍し、タイなどでもプレーし10年10月に現役を引退。現在は東南アジア発のJリーガー誕生に向けた活動に尽力し、一般社団法人JDFA代表理事、Jリーグ・アジア・アンバサダーを務める。177センチ、72キロ。

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◆J1での主な同窓監督対決 00年5月に柏西野朗が、浦和西と早大時代の1学年上の川崎F今井敏明と対戦し、4-2で制した。15年3月には清水大榎克己が、清水東の2学年上で松本を指揮する反町康治と対戦し、松本が1-0で勝利。17年12月には清水商の同級生だった磐田名波浩、鹿島大岩剛が初対戦し、0-0で引き分けた。