<陸上:世界選手権>◇第2日◇16日(日本時間17日)◇ユージン(米オレゴン州)・ヘイワールドフィールド◇男子100メートル決勝

18回目の大会で日本勢初の男子100メートルのファイナリストとなったサニブラウン・ハキーム(23=タンブルウィードTC)は、10秒06で7位だった。1位はカーリー(米国)で9秒86。2位にブレーシー、3位にブロメルが入り、米国勢が表彰台を独占した。

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正直、どう考えているのか、いぶかしんでいた。15年8月1日、和歌山・紀三井寺陸上競技場での高校総体。競技場の外にあった簡易テントに16歳のサニブラウンが座っていた。自己ベスト10秒28の高2は、目標にボルトの世界記録9秒58の更新を公言していた。

当時の陸上界は、13年4月に17歳の桐生が10秒01を出してから、日本初の9秒台で持ちきりだった。だが16歳は9秒台を質問され「目標は9秒58」と答える。「どうして?」と聞くとのんびりした口調で答えた。

「持つなら大きな目標をもったほうがいい。先のことも見えてくる。自分にも言い聞かせられるし、頑張れる」。

理屈はわかるが、現実離れしていると感じた。しかしサニブラウンはその後も「9秒58」を口にし続けた。高校卒業からダイレクトで米・フロリダ大に入学。さらに米国でプロ転向。いずれも日本陸上界ではパイオニアといえる道。9秒58からの逆算がそうさせた。

この日の決勝でも悔しさを口にした。もしかしたら五輪でメダルをとっても満足しないのかもしれない。9秒58を更新できるかは、わからない。ただ16歳で立てた誓いがその背中を押し続けることは間違いない。【元陸上担当=益田一弘】