【15日モスクワ=益田一弘】リオ五輪の分岐点-。男子マラソンの川内優輝(26=埼玉県庁)が、17日の号砲を前にモスクワ市内で会見した。気温20度前後と涼しいモスクワでのレースを歓迎した上で「ここでいい結果じゃないと、リオも苦しい。集大成にしたい」と発言。苦手な夏への適応力を見極める考え。16年リオ五輪への道を断念する可能性も含めて、日本代表の資格をかけて号砲を待つ。

 笑わない。まれに見せる笑顔も硬い。川内が、緊迫感を漂わせた。6位入賞が目標の世界舞台はこの日、正午で気温17度だった。「今日のような気候なら最高のパフォーマンスができる。スローペースで最後にどかん(とスパート)が一番いい」。その上で、日本代表の資格を自らに問うた。

 「やれるだけのことはやった。次回の北京(15年世界選手権)はさらに暑い。ここでいい結果じゃないと、リオ(五輪)も苦しい。夏の大会で戦えるか、試さないといけない。最後になるかもしれないので。6位かどうかじゃなく、納得できる走りができるか」

 暑さが大の苦手だが、世界選手権と五輪は8月。18位だった11年大邱大会はゴール後にぶっ倒れた。「大邱の閉会式で(次の)モスクワの映像を見た。2年間、モスクワでは戦いたい気持ちがふくらんだ。集大成にしたい」。自分は日の丸をつけて夏のマラソンを走るべきなのか、見極める。

 こだわりの2ミリと10グラムで備えた。川内のシューズをつくるアシックス社の田崎マネジャーは「かかとを2ミリほどアップしている。前傾姿勢を保てて、前に前に進む」。川内はレース用シューズを2度のマラソンで交換するほど力強いキックが特徴。その長所を生かす。さらに帽子はつばのシンを抜いて約10グラム軽量化。首筋を覆うメッシュ素材もはさみで自らカットした。

 「2年前よりいい練習ができている。海外経験も積んだ」。「夏の川内」の存在意義をかけて出陣する。