<全国高校バスケット選抜優勝大会:山形商75-29東海大三>◇女子3回戦◇25日◇東京体育館

 “神の声”が後押しした。女子の山形商(山形)が75-29で東海大三(長野)に圧勝し、3年連続の8強を決めた。昨年の連続3位の立役者で、大沼美琴(1年)の姉美咲(19=デンソー)が応援に駆けつけた。当時のコートネーム「心(シン)」に掛け、現部員が「神(シン)」と呼ぶ偉大な先輩の声援で、絶大な力を発揮した。

 ありふれた言葉だった。「みんな頑張ってね」。ただ、それだけで良かった。美咲の励ましに「存在だけで頼もしい。すごくパワーになった」と佐藤綾香主将(3年)。効果は序盤から表れた。第1クオーター(Q)は我慢比べ。互いにシュートが決まらずロースコアの展開。それでも粘り強いリバウンドとディフェンスで12-7で切り抜けた。

 前日に1度、ビデオを見ただけの相手だったが、第2Q以降は圧倒した。武田灯(3年)のチーム最多16得点をはじめ、10人が得点を挙げて快勝。高橋仁監督(52)は「前半から集中して大きなミスもなく、自分たちのバスケをやれた」と、選手をたたえた。

 “神頼み”の効果もあった。美咲のバスケットシューズは卒業後も、部室に置いてある。部員たちは「心さんのバッシュなんて捨てられない ! 」と3年生全員で部室内に「心さんコーナー」を作った。やがて「心」の文字に掛け「神さん」と呼ばれるようになり、今大会出発前には、そのコーナーに「(準決勝以上が試合を行う)メーンコートに立てますように」と祈りをささげ、決戦の地に向かった。

 そんな美咲は、後輩たちの快勝に「思いっきり、やれていて良かった」と安心した。ただ妹美琴には厳しく「まだ頑張りどころがある」と注文を付けた。美咲は、この日で東京を離れたが「ここまで来たんで次、勝ってメーンコートでプレーしたい」と佐藤主将。26日の準々決勝は総体3位の強豪・金沢総合(神奈川)と対戦。“神越え”を果たすには、倒さなければならない。【三須一紀】