<全国高校バスケット選抜優勝大会:福岡大大濠99-93藤枝明誠>◇男子準々決勝◇27日◇東京体育館

 藤枝明誠(静岡)が福岡大大濠(福岡)に逆転負けし、県勢初のベスト4進出を逃した。開始から、両チーム最多36得点をマークしたエース藤井祐真(3年)が飛ばし、一時は18点差をつけるなど優位に進めた。だが、藤井らを休ませた第2クオーター(Q)5分すぎからリズムが狂うと、前半リードは1点に迫られた。立て直しを図った後半もゴール下のシュートが嫌われ、リバウンドでも圧倒されて、勝利を引き寄せることはできなかった。

 9点差を縮めようと打ち続けた藤井の3点シュートが決まった時、残り時間はもう0秒7しかなかった。わずかでも時間を止めようとプレスをかけたが、時すでに遅かった。ユニホームで顔を覆い、いつまでもコートを見つめていた藤井は「本当に悔しいです。相手には(王者)洛南に勝ったという勢いがあった。高校最後の大会だし、優勝して終わりたかった」と信じられない逆転負けに、ただぼうぜんとするだけだった。

 天国にいた第1Q。「今までチームに迷惑をかけた分、果敢に攻めた」と腰痛を抱える藤井が、自分へのリミッターを外した。鋭いカットインに、中長距離シュート。誰も阻むことを許さないプレーでいきなり今大会自身最多15得点を挙げた。第2Qも勢いはそのまま、最大18点差もつけた。だが、残り5分。センター羅中杰(3年)とともに2ファウルとなり、大事を取ってベンチに下がった。これが転落の始まりだった。

 チーム得点王とリバウンド王が一気に抜けて「ペースが崩れた」と鈴木友貴主将(3年)。こぼれ球を拾えず、反対に何度も速攻を決められた。9連続得点を許し、1点差にまで詰め寄られた。第3Qから2人を戻したが「1度下がってシュートタッチが悪くなった」と藤井。リズムは戻せず、終盤には羅がゴール下を連続で外した。リバウンド数も相手に15本も上回られ、西塚建雄監督は「2人を下げたのは安全策だったが、向こうの力を甘く見ていた。せっかくの貯金を大事にすべきだった。私の采配ミスです」と悔やんだ。

 16強止まりだった昨季から選手の意識は変わり、自主練習は1時間も遅くまで伸びた。もともとの才能に努力が加わった今季は全国Vを狙える位置にきていた。届かなかったが、拓大に進学する藤井は「1年から先発で出させてもらい、ここまで成長させてもらった。最高でした」と、高校バスケに費やした時間を振り返った。【今村健人】