箱根駅伝4連覇中の青学大・原晋監督(51)は3日、サッカー日本代表の西野朗監督(63)のワールドカップ(W杯)での采配を独自の目線で分析した。

 前体制で外されかけた本田圭佑(32)ら、選手たちの沈滞ムードを払拭(ふっしょく)し、選手の力を引き出した監督力を称賛。批判を浴びた先月28日のポーランド戦のボール回しについては立派な戦術と理解を示した。

 サッカーは素人で詳しくないが、日本代表は4試合を通して躍動感があり、いきいきとプレーしているように見えた。大会直前に就任した西野監督のマネジメント力が大きい。

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(1)選手の力を引き出す能力 ハリルホジッチ前監督はサッカー先進国の欧州から来た。日本にサッカーを教えているとの気持ちは強かったはず。だから「恐怖政治」ではないが、選手を支配し、少しでも戦術に合わないような選手は即排除する傾向があったのではないか。前監督の解任直前の日本代表に躍動感が消えていた。

 日本代表23人中、約7割の15人が海外組。彼らは欧州で日々、技術、メンタルを磨く。確かな力は付いていた。西野監督は選手の意見を聞き、ある種フラットな関係になることで、彼らの力を引き出したように感じた。

(2)本田の再生 スポーツは技術力と運動量の掛け算。今の本田選手は技術力は抜群のままも、年齢を重ねた影響で運動量は落ちた。先発では力を最大限発揮できない。先発で使えないエースは、他の監督だったら外されかねない。西野監督は、本田選手をどういかすかを考え、野球で例えるなら「抑え」に起用。後半20分すぎ、相手の運動量が落ちたところで、世界有数の技術力を発揮。セネガル戦では3大会連続のゴールを決めたように、短時間の「抑え」に持ってくることで彼の良さを引き出した。

(3)ぶれない戦術 ポーランド戦の最後10分の「パス回し」。論議を呼んだが、1次リーグ戦を勝ち抜くためのルールの中で行ったこと。箱根駅伝でたとえると、我々の9区での走りが「パス回し」に似ている。

 4連覇中、9区の平均区間順位は4・75位。2区同様、23・1キロと距離が長く、太陽も昇って暑さも出てくる。8区までに下位との差を広げ、9区では選手にあえて「抑えろ」と指示を出す。全力で突っ込ませて脱水症状でも起こされたらかなわない。区間タイムよりチーム全体を優先させ、余裕を持った「ピクニックラン」をさせる。常に全力のフェアプレーとは異なるかもしれないが戦術として行っている。野球でも敬遠がある。「パス回し」も立派な戦術で、堂々と遂行した西野監督にプロフェッショナルな姿勢を感じた。

(4)数字以上の価値 大健闘のベスト16も、数字だけを見ると1勝2敗1分け。しかも1勝は開始直前の相手の退場で1人かけたコロンビア戦だ。4戦1勝。数字だけをみたら何だと思う人がいるかもしれない。だが、サラリーマン時代からの考えでもあるが、数字だけで判断するのは悪い管理職。数字の裏に隠されたものがある。内容のある期待を感じさせるプレー。W杯の試合を見た国民だれもが、日本サッカーのステップアップを感じただろう。1勝2敗1分けの勝敗以上に西野ジャパンの戦いには価値があった。

 想像以上のW杯の盛り上がり。今後、運動能力の高い子供はますますサッカーに流れる。西野ジャパンの奮闘に心を揺さぶられた一方で、陸上の将来を考えると危機感を抱いている。(ニッカンスポーツ・コム/コラム「原監督のハッピー大作戦」)