天下の険に、あの男が戻ってくる。第86回箱根駅伝は2日、午前8時に往路の号砲が鳴らされる。連覇を狙う東洋大は、山登りの5区に「東洋の魔神」こと柏原竜二(2年)が登場する。前回は、4分58秒差を大逆転。チームを往路優勝に導き、総合Vへのきっかけをつくった。今年もあの快走が見られるのか。2年連続2度目の「山」に立ち向かう。

 箱根デビューは、あまりに鮮烈だった。約1年前、1年生だった柏原は「東洋の魔神」になった。トップと4分58秒差の9位でたすきを受けると、8人をごぼう抜き。全10区間中最長の23・4キロ、標高差864メートルの山を駆け抜け、1時間17分18秒の区間新を樹立した。「山の神」と言われた今井正人(順大)の記録を、47秒も更新していた。

 ならば、今年はどうか。2年目の難しさもあり、2年生としての成長もある。

 東洋大の酒井監督

 当然、2年目の難しさはあります。でも竜二は「後輩ができたことだし、負担を掛けたくない」と言っている。去年は1年生で頑張って、今回は後輩に恥ずかしくない走りをしたいようです。注目度も、去年とは違う。体調不良もないし、順調にきています。

 昨年は、指示されたペースを無視して突っ込んだ。山の怖さを感じなかった。今年は、苦しさを知る経験者として臨む。一方、選手としての成長もある。

 柏原

 自分では分からないけど、体ができてきて、去年よりもガッチリしてきたとよく言われる。(前回の走りは)覚えていない。今年はまた新たな気持ちで走りたい。忘れようというわけではないけど、それにすがっていたら元も子もないですから。

 練習の設定タイムも速くなった。走る本数も、ほかの選手より1本多く用意されることもあった。伸び盛りの20歳。1万メートルの自己ベストは20秒以上更新し、8月にはユニバーシアードにも出場した。選手としてのスケールは、確実に大きくなってきた。

 酒井監督は「柏原までどうやってつないでいくか。去年より離れたらきつい。彼にとって酷。3、4分差できてほしい」と、エースに過度な負担が掛かることを心配する。果たして柏原にとって、2度目の山は何が待ち受けるのか。2日の午後1時半すぎ、答えが出る。【佐々木一郎】