20年東京五輪の追加種目にスケートボード4種目が入った日本ローラースポーツ連盟(JRSF)の平沢勝栄会長は「大きな喜び」と話しながらも複雑な表情をみせた。JRSFからはインラインスケートのスロープスタイルとローラーマラソンも申請していたが、こちらは落選。スケートボードは申請していた「ストリート」に加え、未申請の「パーク」まで入った。

 会見では競技種目について質問が殺到。「ストリート」は30~150メートルの直線に並べられたセクションと呼ばれる障害物を使って演技するもの。ジャンプの仕方、高さ、姿勢を難易度によって得点をつける。「パーク」はテニスコートほどのエリアに設置されたセクションで自由に技を競う。これもジャッジによる採点で優劣を競う種目だ。

 スケートボードの追加種目採用は、国際オリンピック委員会(IOC)の意向が強く反映されている。昨年の南京ユース五輪では公開競技として実施。冬季五輪でのスノーボード成功もあって、スケートボードの正式採用がうわさになった。しかし、国際スケートボード連盟(ISF)はIOC未承認。IOCはローラースポーツの1種目として承認団体の国際ローラースポーツ連盟(FIRS)に運営を働きかけたのだ。

 IOCの意を受けたFIRSは、今年2月にスケートボード委員会を設置。JRSFも追従して5月にスケートボード委員会を作った。同時にすでに活動していた日本スケートボード協会(AJSA)を傘下におく準備を進め、AJSAの宮沢武久会長をスケートボード委員長に招いた。JRSFにとって、スケートボードは「新人」だった。

 98年長野冬季五輪でスノーボードが採用された時に似ている。IOCが当時未承認だった国際スノーボード連盟(ISF)を無視して、承認していた国際スキー連盟(FIS)をスノーボードの統括団体として指名した。ISFはFISと対立、選手の奪い合いなどに発展し、トッププロの中には五輪をボイコットした選手もいた。しかし、今やスノボは冬季五輪に欠かせない種目。AJSAの横山純事務局長は「今回もスノボと同じ。ただ、我々はいい関係でやっています」と笑顔で説明した。

 会見に同席した若手有望株の瀬尻稜(18)は、隣に座った平沢会長の「金メダルって言って」という言葉も届かず「楽しみたい」と笑顔で言った。横山事務局長は「スケボーはスポーツとしてやる人も、ライフスタイルとしてやる人も、遊びとしてやる人もいる。独自の文化を持っていて、中には競技として他選手と争うのを嫌がる選手もいる」と説明した。瀬尻は促されるように「目指すのは金メダル」と言ったが、競技として勝つこと以外の魅力を伝えたい気持ちがあるのも確かだ。

 宮沢スケートボード委員長はコース作りを「難しく、かっこよく、クールなコース」と話した。ソチ五輪のスノボでも何度も聞かれた「クール」という評価基準。サーフィンも同じだ。「より早く、より高く、より強く」の五輪精神に、東京五輪では「よりクールに」が加わることは間違いない。