「空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ」こと世界選手権の女子個人組手68キロ級の覇者・植草歩(24=高栄警備保障)が涙の大会連覇を飾った。

 調子は悪かった。初戦となる2回戦では1-0で接戦を制すると、3回戦は1-1で何とか判定勝ち。準決勝、決勝も1-0と苦しい試合だった。連覇、世界女王、満席に埋まった日本武道館の観客と約250人報道陣。普段から「注目を重圧でなく、力にする」とポジティブ思考の美女も、自然と気負いがあった。体が重かった。

 決勝で山田沙羅(22=大正大)に勝利し、連覇を決めると、涙が頬を伝った。 「世界選手権チャンピオン、前回チャンピオンは思った以上に苦しいものでした。それに勝てなければ、オリンピックで勝つことはできない。どんなに調子が悪くても勝たなくてはならない」。涙声の中に、強い決意がにじんだ。

 山田からポイントは奪ったのは中段付き。柏日体高時代に1日100本の空突きで鍛えた得意技だったが、この日は決まっていなかった。ただ、決勝の勝負所で唯一決まった。探り合いが続く展開の中で、プレッシャーをかけると、山田の体が一瞬、前のめりになった。前拳を狙っていると感じ取った。その隙をついて、必殺の中段付きを決めた。

 大学時代も全日本学生選手権は、大学1年から4年まで、「2、1、2、1(位)」と連覇はなかった。全国レベルの主要大会では初の連覇を経験した。「心の成長が見られたかな」。東京五輪でも会場となる日本武道館。その舞台で、東京五輪のヒロイン候補が重圧を越え、一回り大きくなった。